DX人材不足を解決する2つの方法とは?
企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためには、ITに関する豊富な知識とスキルを兼ね備えた「DX人材」が必要不可欠です。多くの企業にとって、グローバル市場で競争力を維持、強化するためにデジタル化は促進しなければならない重要課題です。しかし、その「DX人材」が不足しているという課題を抱えている日本企業は少なくありません。本記事では、日本のDX推進における課題、DX人材に求められるスキル、DX人材を確保するための2つの方法についてご紹介します。
目次
1.日本企業のDX推進における課題
まず初めに、日本企業がDX推進における現状および抱えている課題について説明します。
現在、多くの企業がデジタル技術を活用して業務を効率化したり、新たなビジネスモデルを開発したりするDXプロジェクトを推進しています。また、新卒採用や中途採用により、デジタル人材の確保にも取り組んでいます。
採用に力を入れている一方で、多くの企業でDX人材不足に直面しています。特にAIやデータ分析などの専門知識を持つ人材が不足しているという課題を抱えている企業が多いようです。
つまり、多くの企業がDXを推進したいと考えているものの、それを技術的に実行できる人材の確保が上手くいっていないがゆえに、なかなかDXが進んでいないということです。
変化の激しい今日において競争優位性を維持するためには、DXの推進が不可欠であり、そのための人材獲得や育成は企業の急務となっています。
2.DX人材の定義とその重要性
次に、そもそものDX人材の定義と重要性についてご説明します。
DX人材とは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に必要な技術・知識・スキルを持ち、企業や組織のデジタル化をリードする人材のことです。
DX人材には、データ分析、AI(人工知能)、IoT(インターネット・オブ・シングズ)、プログラミング、クラウドコンピューティング、サイバーセキュリティ、プロジェクトマネジメント、デザイン思考などの幅広いスキルを持っている人材が含まれます。
企業にDX人材が必要な理由は以下の通りです。
競争力の強化:DX人材は、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを変革し、企業の競争力を強化する役割を担います。これにより、企業は市場での地位を維持・向上させることができます。
顧客満足度の向上:DX人材は、データ分析やデザイン思考を活用して、顧客ニーズに応える新たなサービスや製品を開発する能力があります。これにより、企業は顧客満足度を向上させ、リピートビジネスや口コミによる集客を促進することができるでしょう。
業務効率化:DX人材は、AIやIoT技術を用いて業務プロセスを自動化・効率化することができます。これにより、企業はコスト削減や生産性向上を実現し、経営効率を高めることができます。
セキュリティ対策:デジタル化が進む中で、企業はサイバーセキュリティリスクに直面しています。DX人材は、適切なセキュリティ対策を立てる能力があり、企業の情報資産を保護します。
イノベーションの推進:DX人材は、新たな技術や市場トレンドを捉え、企業のイノベーションを推進する役割を果たします。これにより、企業は新たなビジネスチャンスを掴むことができます。
組織文化の変革:DX人材は、デジタル技術の導入によって組織文化を変革する役割も担います。デジタル技術を活用したコミュニケーションやコラボレーションを促進し、組織内での情報共有や意思決定の迅速化を実現します。これにより、企業はより柔軟で効果的な組織運営が可能となります。
社会的責任の遂行:DX人材は、デジタル技術を活用して企業の社会的責任(CSR)を遂行する役割も果たします。環境問題や社会課題に対する取り組みを強化し、企業のブランド価値や社会的信頼性を高めることができます。
以上のことから、企業においてDX人材が重要である理由は、これらの要素がビジネスの成長や持続的な競争力を維持・向上させるために不可欠だからです。DX人材は、企業のデジタル化を推進し、イノベーションや効率化を実現することで、ビジネスの成功をサポートします。これらの理由から、企業はDX人材の確保・育成に力を入れることが求められています。
3.5つの人材類型と15のロール
ここでは、経済産業省およびIPA独立行政法人が発表したデジタルスキル標準の中で示された5つの人材類型と15のロールについてご紹介します。
5つの人材類型
ビジネスアーキテクト:
DXで実現したいことを設定し、その目的を達成するために関係者間の共同関係を構築したり、進行を管理したりする
データサイエンティスト:
DXの目的の実現に向けて、主にデータを集めたり、解析したりする仕組みを設計・実装・運用する
サイバーセキュリティ:
サイバーセキュリティリスクの影響を評価し、それらを抑制するための対策を実施する
ソフトウェアエンジニア:実際に製品やサービスを提供するためにシステムやソフトウェアを設計したり、実装したり、運用したりする
デザイナー:
ビジネス・顧客・ユーザーなどの多角的な視点から製品やサービスの方針や開発プロセスの策定やそれらに沿うデザインを設計する
引用元:経済産業省「デジタルスキル標準」
15のロール
上述した通り、経済産業省の「デジタルスキル標準」の中では、DX人材は5つの人材類型に分けられていますが、さらにそれらを業務やスキルに基づいて定義された15の「ロール」が存在します。DX人材をより明確に分けることで、企業がどのような人材を確保する必要があるのか、どのようなスキルを育めるようにすればよいのかを判断するのに役立ちます。
具体的には、以下の通りです。
ビジネスアーキテクト:
①ビジネスアーキテクト(新規事業開発)
②ビジネスアーキテクト(既存事業の高度化)
③ビジネスアーキテクト(社内業務の高度化・効率化)
データサイエンティスト
④データビジネスストラテジスト
⑤データサイエンスプロフェッショナル
⑥データエンジニア
サイバーセキュリティ
⑦サイバーセキュリティマネージャー
⑧サイバーセキュリティエンジニア
ソフトウェアエンジニア
⑨フロントエンドエンジニア
⑩バックエンドエンジニア
⑪クラウドエンジニア/SRE
⑫フィジカルコンピューティングエンジニア
デザイナー
⑬サービスデザイナー
⑭UX/UIデザイナー
⑮グラフィックデザイナー
引用元:経済産業省「デジタルスキル標準」
4.DX人材に求められる10のスキル
ここでは、DX人材に求められる代表的な10のスキルをご紹介します。
コミュニケーション能力
DX人材は、異なる専門分野のメンバーや経営層と効果的にコミュニケーションを行うことが求められます。具体的には、リスニングスキル、プレゼンテーション力、交渉力、問題解決能力などが重要です。また、技術的な知識をわかりやすく伝える力や、異なる文化や背景を持つ人々と共同作業する能力も不可欠です。
デザイン思考
デザイン思考は、ユーザーのニーズに焦点を当てたイノベーションを生み出すアプローチです。DX人材は、ユーザー調査、プロトタイピング、検証、改善などのデザイン思考プロセスを理解し、新しいソリューションやサービスを開発する能力が求められます。
データ分析スキル
DX人材には、データを収集・解析し、ビジネス上の意思決定や戦略策定に活用できる能力が求められます。具体的には、統計学、機械学習、人工知能などの知識が必要であり、データをビジュアル化し、他者に分かりやすく伝える力も重要です。
プログラミングスキル
DX人材には、システム開発やアプリケーション構築ができるプログラミングスキルが必要です。主要なプログラミング言語(Python、Java、JavaScriptなど)や開発手法、ソフトウェアアーキテクチャの知識が求められます。
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングは、現代のITインフラの基盤となっており、DX人材はクラウドサービス(AWS、Azure、GCPなど)の知識や活用方法を理解していることが求められます。また、クラウドセキュリティやコスト管理の知識も重要です。
サイバーセキュリティ
デジタル技術の普及に伴い、サイバーセキュリティがますます重要になっています。DX人材は、脅威やリスクの特定、対策策定、インシデント対応などのセキュリティ知識が求められます。
プロジェクトマネジメント
DX人材は、プロジェクトの立ち上げから完了までを効率的に運営できる能力が求められます。具体的には、スケジュール管理、リソース管理、品質管理、リスク管理などの知識と、チームビルディングやコミュニケーション能力が重要です。
ビジネス戦略理解力
DX人材は、企業のビジネス戦略や目標を理解し、技術的な観点から戦略をサポートする能力が求められます。業界のトレンドや競合状況を把握し、デジタル技術を活用して事業成長や競争力向上に貢献できる人材が求められています。
チェンジマネジメント
デジタル変革は、組織や文化に大きな変化をもたらします。DX人材は、チェンジマネジメントのスキルを持っていることが求められます。具体的には、変化への抵抗を克服し、組織のメンバーを巻き込んで変革を推進する能力や、新しい働き方や考え方を導入する力が重要です。
情報収集・学習力
デジタル技術は日々進化しており、DX人材は常に最新の知識や技術を学び続ける能力が求められます。情報収集力や自主的な学習意欲が高く、新しい技術や手法を素早くキャッチアップし、自らのスキルセットに取り入れることができる人材が求められています。
このように、データ分析やプログラミングなどの技術的スキルはもちろん重要ですが、プロジェクトマネジメントやデザイン思考、コミュニケーション能力のようなソフトスキルも同等に重要であることを理解することが、現代のDX人材には不可欠です。これらのスキルを習得し、組織内で活用することで、企業はデジタル変革を加速し、競争力を維持・向上させることができます。
5.DX人材を確保する2つの方法
最後に、DXを成功させるために必要不可欠である「DX人材」の獲得方法を2つご紹介します。
5.1.DX人材を社内で育成する方法
まず一つ目は、社内でDX人材を育成する方法です。具体的には、以下のような取り組みを実施することで社内でDX人材を育成することができます。
研修・教育プログラムの導入
データ分析、AI、IoT、プログラミングなど、DXに関連する技術やスキルを習得するための研修や教育プログラムを実施します。
社内勉強会・ワークショップの開催
社内で定期的に勉強会やワークショップを開催し、社員が自主的に知識やスキルを向上させる機会を提供します。
メンター制度の導入
DXに精通した社員が、他の社員に指導・アドバイスを行うメンター制度を導入し、スキルの継承・共有を促進します。
社内プロジェクトへの参加
DXに関連する社内プロジェクトに社員を参加させ、実践を通じてスキルを磨かせます。
社外セミナーや研修への参加
社外で開催されるDXに関連するセミナーや研修に社員を参加させ、最新の知識やスキルを習得させます。
資格取得の支援
データ分析やプログラミングなど、DX関連の資格取得を支援し、社員のスキル向上を促します。
社内で人材を育成することのメリット
次に、社内でDX人材を育成することには、以下のようなメリットがあります。
コスト削減
外注に比べ、社内でスキルを持った人材を育成することでコストを抑えることができます。長期的には、人材育成にかかるコストが外注費用よりも低くなることがあります。
知識・スキルの継続的な活用
社内で育成したDX人材は、組織内で知識やスキルを継続的に活用・共有できます。これにより、プロジェクトごとに外部の専門家を頼る必要がなくなります。
社内文化との適合性
社内で育成した人材は、組織の文化や価値観に馴染んでおり、スムーズなコミュニケーションや協力が期待できます。
企業の戦略・ビジョンへの適応力
社内で育成したDX人材は、企業の戦略やビジョンを理解しており、それに沿った取り組みを実施する能力があります。これにより、企業全体として一貫した方向性を持つデジタル変革を進めることができます。
社員のモチベーション向上
社内での人材育成は、社員にキャリアアップの機会を提供し、モチベーション向上につながります。また、社員が自分のスキルを活かして貢献できる環境を整えることで、離職率の低下や社員の満足度向上にも寄与します。
イノベーションの促進
社内でDX人材を育成することで、新たな技術やアイデアを組織内で共有しやすくなり、イノベーションを促進できます。社内で知識やスキルが広がることで、新しいアイデアや取り組みが生まれやすくなります。
リスク管理
社内でDX人材を育成することで、外部パートナーとの連携に関連するリスク(情報漏洩やプロジェクトの遅延など)を軽減できます。また、社内人材がプロジェクトを進めることで、より適切なリスク管理が可能となります。
このように、社内でDX人材を育成することは、コスト削減や知識・スキルの継続的な活用、企業文化への適合性、戦略・ビジョンへの適応力、社員のモチベーション向上、イノベーション促進、リスク管理などのメリットがあります。これらのメリットを考慮すると、企業は自社の状況や目標に応じて、DX人材の育成に取り組むべきであると言えます。
社内で人材を育成することのデメリット
DX人材を獲得する2つ目の方法として「外部からの調達」があります。先ほど、社内で育成するメリットについてご紹介しましたが、当然デメリットもあります。DX人材を社内で育成するデメリットは以下の通りです。
育成に時間がかかる
DX人材の育成には、教育プログラムや研修などの時間が必要です。そのため、短期的には即戦力となる人材が欠けることがあり、今すぐにDXを推進する必要がある企業にとっては、外部から調達したほうが良いかもしれません。
育成コスト
研修や教育プログラム、資格取得支援などに関わるコストが発生します。また、社内のリソースを教育に割くことで、他の業務に影響が出る可能性があります。
限定的な知識・スキル
社内で育成されたDX人材は、自社のビジネスや業界に特化した知識・スキルを持つことが一般的です。そのため、幅広い分野や最新の技術に精通していない場合があります。
成果の保証が難しい
社内で育成したDX人材が十分なスキルや経験を持っているかどうかを確認することが難しく、プロジェクトの成功を保証できないかもしれません。場合によっては、多額の育成コストを掛けたにもかかわらず、期待していた成果が得られないかもしれません
5.2.DX人材を外部から調達する方法
上述した社内育成のデメリットを補うための選択肢として、外部パートナーから専門的なスキルや知識を兼ね備えた人材を即座に調達できるシステムエンジニアリングサービスの魅力についてご紹介します。
DX人材を外部から調達するメリット
以下はそのメリットについてです。
即戦力の確保
システムエンジニアリングサービスを利用する一つ目のメリットは、比較的短期間で即戦力を確保できる点です。そのため、明確に必要なDX人材像が定まっている場合は、SESを利用することをおすすめします。
豊富な経験と専門知識
外部のDX人材は、様々な業界や企業での経験が豊富であり、最新の技術や幅広い分野の知識を持っています。これにより、企業に新たな視点やアイデアをもたらすことが可能です。
柔軟な人材活用
プロジェクトごとに外部のDX人材を獲得することができるため、業務量やニーズに応じて柔軟に人材を活用することができます。
社内リソースの集中
社内リソースを人材育成に割かずに、他の重要な業務に集中させることができます。これにより、効率的な組織運営が可能になります。
リスク軽減
システムエンジニアリングサービスによって提供されるDX人材は、契約期間やプロジェクトに応じて利用できるため、採用に関わるリスク(採用コスト、人員調整など)を軽減できます。
ベンチマーキング
外部のDX人材が持っている知識やスキルを学ぶことで、社内の人材も成長させることができます。これにより、間接的に社内のDX人材育成に貢献することができます。
システムエンジニアリングサービスの利用には、さまざまなメリットがあります。これらのメリットを考慮すると、企業はプロジェクトや状況に応じて、システムエンジニアリングサービスを活用してDX人材を獲得することが有益であると言えます。
まとめ
企業がDXを推進するうえで、要件を満たした「DX人材」を確保することが重要です。そして、DX人材を確保する方法として、「社内で育成する方法」と「外部から調達する方法」の2つの方法について詳しく解説しました。それぞれには、異なるメリットがあるため、自社のDX計画に基づいてどちらかを選択する必要があるでしょう。
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