クラウドネイティブ

クラウドネイティブとは?5つの技術とメリット

急速に変化する今日において、ユーザーや世の中のニーズに応えるためには迅速かつ効率的な開発、運用が求められます。そこで、クラウド環境で最適化されたアプリケーション開発および運用のアプローチである「クラウドネイティブ」が注目されています。

 

本記事では、クラウドネイティブとは何か、「クラウドファースト」や「クラウド・バイ・デフォルト」との違いは何か、クラウドネイティブの代表的な5つの技術などについてわかりやすく解説します。

目次

クラウドネイティブとは

まず初めに、クラウドネイティブとは何か、求められる背景、「クラウドファースト」や「クラウド・バイ・デフォルト」との違いについてわかりやすく解説します。

クラウドネイティブの定義

クラウドネイティブとは、「クラウドコンピューティング環境で最適化されたアプリケーション開発と運用のアプローチのこと」を指します。

 

具体的には、マイクロサービス(小さな機能単位で分割されたサービス)やコンテナ(アプリケーションとその依存関係をパッケージ化する技術)、自動スケーリング(リソースの自動調整)、継続的インテグレーション・継続的デリバリー(CI/CD:開発から運用までのプロセスの自動化)などの技術や手法を活用して、効率的で柔軟なシステムを構築します。

 

これら技術の詳細は後述します。

クラウドネイティブが求められる背景

クラウドネイティブが求められる背景には、次のようなものがあります。まず、近年のデジタル変革により、企業は迅速に変化する市場環境に適応しなければなりません。クラウドネイティブのアプローチは、アプリケーションの迅速な開発や更新を可能にし、市場のニーズに素早く対応できる手段として注目を浴びるようになりました。 また、クラウドコンピューティング技術の進化に伴い、従来のモノリシック(一つの大きなアプリケーションとして構築されたシステム)なアプリケーションでは、スケーラビリティやリリースサイクルの速さが求められるようになりました。クラウドネイティブの手法は、これらの課題に対処するための最適な解決策となります。 さらに、インフラストラクチャやリソース管理の柔軟性が向上し、クラウドネイティブアプローチを採用することで、システムの運用コストや管理の負担を削減できるというメリットがあります。

「クラウドファースト」や「クラウド・バイ・デフォルト」との違い

クラウドネイティブ、クラウドファースト、クラウド・バイ・デフォルトは、いずれもクラウドコンピューティングの利用に関連する用語ですが、それぞれ異なる意味を持っています。

 

まず、上述した通り、クラウドネイティブはクラウド環境に最適化されたアプリケーション開発と運用のアプローチのことで、マイクロサービスやコンテナ、自動スケーリング、CI/CDなどの技術や手法を活用して、効率的で柔軟なシステムを構築します。

 

一方、「クラウドファースト」は、新しいプロジェクトやシステム開発において、最初にクラウドサービスを検討するという戦略のことです。例えば、企業や組織が、コスト削減やスケーラビリティの向上のために、オンプレミスではなく、まずクラウドサービスを利用することを優先するなどです。

 

そして、「クラウド・バイ・デフォルト」は、新しいシステムやアプリケーションを開発する際に、デフォルト(初期設定)としてクラウド環境を選択するという考え方です。このアプローチでは、特別な理由がない限り、クラウド環境が優先されます。

 

これらの違いを簡単にまとめると、クラウドネイティブはクラウド環境でのアプリケーション開発と運用の方法論を指し、クラウドファーストは新しいプロジェクトやシステム開発でクラウドを最初に検討する戦略を表し、クラウド・バイ・デフォルトは新しいシステムやアプリケーション開発において、クラウド環境を初期設定として選択する考え方を意味します。

クラウドネイティブの代表的な5つの技術

次に、クラウドネイティブで代表される5つの技術要素について解説します。

コンテナ

コンテナとは、アプリケーションとその依存関係(ライブラリや設定ファイルなど)を一つのパッケージにまとめ、独立した実行環境を提供する技術のことです。

 

コンテナは軽量であり、オペレーティングシステム(OS)のレベルでの仮想化を行うため、仮想マシンよりも起動が早く、リソース消費も少ないという特徴があります。

 

また、コンテナ技術を利用することで、開発環境や運用環境での動作の違いを最小限に抑えられ、アプリケーションのデプロイ(運用環境への展開)や移行が容易になります。これにより、開発者は環境の違いによるトラブルを減らし、開発や運用の効率を向上させることができます。

 

クラウドネイティブ環境におけるコンテナの利用は、迅速な開発やデプロイ、スケーラビリティの向上、システムの耐障害性の強化など、クラウドネイティブアプリケーションのメリットを最大限に活用することができます。

マイクロサービス

マイクロサービスとは、アプリケーションを機能単位で分割し、それぞれの機能を独立したサービスとして開発・運用するアーキテクチャのことです。各マイクロサービスは、独自のデータストレージやAPIを持ち、他のマイクロサービスと通信することでアプリケーション全体の機能を実現します。

 

マイクロサービスアーキテクチャの利点は、以下のような点が挙げられます。

 

開発効率の向上: 各サービスが独立しているため、開発チームは他のサービスに影響を与えずに機能の追加や修正が行えます。これにより、開発サイクルが短くなり、迅速な開発が可能となります。

 

スケーラビリティの向上: 各マイクロサービスは独立しているため、個別にスケールアウト(水平方向の拡張)が可能です。これにより、リソースを効率的に利用し、システム全体のパフォーマンスを最適化できます。

 

耐障害性の向上: 一部のマイクロサービスに障害が発生しても、他のサービスは影響を受けずに稼働し続けることができます。これにより、アプリケーション全体の可用性が向上します。


技術選択の柔軟性: 各マイクロサービスは独立しているため、開発チームはサービスごとに最適な技術やフレームワークを選択できます。

サービスメッシュ

サービスメッシュとは、マイクロサービス間の通信を管理し、監視や制御を行うためのインフラストラクチャレイヤーです。サービスメッシュは、アプリケーションのコードからネットワーク通信やセキュリティの責務を分離することで、開発者がこれらの問題に対処する負担を軽減します。

 

サービスメッシュの主な機能は以下の通りです。

 

トラフィック管理:サービス間の通信のルーティングや負荷分散を行い、通信速度や冗長性を向上させます。

 

セキュリティ:サービス間の通信において、暗号化や認証、認可を行うことで、通信の安全性を保ちます。

 

監視: サービス間の通信を監視し、ログやメトリクスを収集・分析することで、システム全体の可視性を向上させます。

 

故障検知とリトライ: サービス間の通信において、故障検知や自動リトライを行うことで、システムの耐障害性を向上させます。

 

クラウドネイティブ環境において、サービスメッシュはマイクロサービスの運用を効率化し、通信やセキュリティの管理が容易になります。これにより、開発者はアプリケーションのビジネスロジックに集中することができ、システム全体の安定性や運用効率が向上します。

宣言型API

宣言型APIとは、システムの状態や振る舞いを記述することに焦点を当てたAPIの設計方法です。

 

宣言型APIでは、システムがどのような状態にあるべきかを定義し、システムが自動的にその状態に達するように調整します。

 

クラウドネイティブ環境では、宣言型APIが重要な役割を果たします。以下に、宣言型APIの利点を説明します。

 

簡潔さと可読性: 宣言型APIでは、システムの期待する状態だけを記述するため、コードが簡潔で可読性が高くなります。これにより、開発者がシステムの振る舞いを理解しやすくなります。

 

自動化と柔軟性: 宣言型APIを使用すると、システムが自動的に期待する状態に達するように調整します。これにより、手動での操作や調整が減少し、運用効率が向上します。また、システムの状態変更に対応する際にも、期待する状態を変更するだけで対応できるため、柔軟性が高まります。

 

エラーの削減: 宣言型APIでは、システムの状態管理が自動化されるため、人為的なミスが減り、システムの安定性が向上します。

イミュータブルインフラストラクチャー

イミュータブルインフラストラクチャーとは、クラウドネイティブ環境において、一度デプロイされたインフラストラクチャー要素(サーバーやネットワーク構成など)を直接更新せず、変更が必要な場合は新しい要素を作成して置き換えるというアプローチのことです。

 

この考え方は、アプリケーションの開発や運用において、安定性、信頼性、スケーラビリティを向上させることを目的としています。

 

イミュータブルインフラストラクチャーのアプローチでは、インフラストラクチャー要素の変更が発生するたびに新しいインスタンスが作成され、古いインスタンスは破棄されます。このため、環境間での設定の差異や運用中のサーバーでの不具合の影響が最小限に抑えられ、システム全体の信頼性が向上します。

 

また、イミュータブルインフラストラクチャーは、自動化やバージョン管理が容易になるため、開発チームは迅速かつ正確にインフラストラクチャーをデプロイできます。これにより、インフラストラクチャーの運用効率が向上し、システム全体の安定性が強化されます。

クラウドネイティブアプリケーションとは

最後に、クラウドネイティブアプリケーションの概要およびそのメリットについてご紹介します。

 

クラウドネイティブアプリケーションとは、クラウドコンピューティング環境に最適化されて開発・運用されるアプリケーションのことです。

 

クラウドネイティブアプリケーションは、上述したコンテナ、マイクロサービス、サービスメッシュ、宣言型API、イミュータブルインフラストラクチャなどの技術を適用して、効率的で柔軟なシステムを構築します。

クラウドネイティブなアプリケーション開発のメリット

クラウドネイティブアプリケーションのメリットは以下のような点が挙げられます。


スケーラビリティ(拡張性): クラウドネイティブアプリケーションは、負荷に応じてリソースを自動的に増減させることができるため、システムが拡張しやすくなります。


速度: マイクロサービスやコンテナ技術を活用することで、アプリケーションの開発やデプロイが迅速に行えます。これにより、市場のニーズに素早く対応できるようになります。


運用効率: クラウドネイティブアプリケーションは、自動化や監視機能を組み込むことが容易であり、運用管理の効率が向上します。これにより、システムの運用コストや管理の負担が削減されます。


堅牢性: クラウドネイティブアプリケーションは、各マイクロサービスが独立して動作するため、一部のサービスに問題が発生しても他のサービスに影響が及びにくく、システム全体の耐障害性が向上します。


イノベーションの促進: クラウドネイティブアプリケーションは、開発チームが新しい技術や手法を迅速に取り入れやすくなります。これにより、イノベーションが促進され、競争力のある製品やサービスを提供することが可能となります。

まとめ

クラウドネイティブなアプリケーション開発を促進することで、世の中のニーズに迅速かつ効率よく対応することができ、多くのビジネスチャンスを掴み、企業の競争力を維持、強化することができるでしょう。

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