11の主要ソフトウェア開発トレンド (2022年〜2024年)
2020年の世界のIT支出は、主にパンデミックによる変動が起因で、5.4%減少しました。しかし、ソフトウェア開発業界は昨年から回復し、予測される支出総額は3兆8000億ドルに達しました。
今年、ソフトウェア開発は、IT経験ゼロのアプリの構築から、病院での患者のモニタリング、職場での社会的距離の追跡まで、あらゆることを実現するために活用されているのです。
2022年、そしてその数年後ソフトウェアとテクノロジーは私たちをどこまで連れて行くのかをさっそくみていきましょう。ここ記事では、ソフトウェア開発トレンド・トップ11をご紹介します。
1. 企業がローコード開発・ノーコード開発を活用
ソフトウェア開発はしばしば、問題や挫折に満ちています。全ソフトウェアプロジェクトの約20%は失敗し、52%は「チャレンジ」です。もちろん、このプロセスにはとてつもないコストが発生します。このような背景から、ソフトウェア開発業界では「ローコード開発・ノーコード開発」というシンプルなソフトウェア開発が奨励され始めました。
ローコード開発・ノーコード開発とは、その名の通り、高度なIT知識やコーディング技術が必要ないソフトウェア開発手法です。ローコード開発・ノーコード開発は、より簡単で迅速な開発を可能にします。ノーコード・プラットフォームでは、ユーザーはビジュアルなインターフェイスにおける作成されたコードのブロックをドラッグ&ドロップするだけです。一方、ローコードプラットフォームは、技術が多少必要ですが、開発者がより速く作業できるようにショートカットを提供します。
KPMGのレポートによると、ローコードプラットフォームを導入した企業の100%が、プラスのROIを報告しています。また、この開発タイプを最も重要な自動化への投資として挙げる企業の重役の数は、パンデミックが始まってから、ほぼ3倍になったとも述べています。
一方、Forrester社は、2021年には全アプリ開発の75%がこのプラットフォームを活用するようになり、2019年に比べて31%も増加することを予測しています。
また、Gartnerによると2023年までに中堅から大企業の半数以上がローコードアプリケーションプラットフォームを活用することになるということです。
2. クラウドコンピューティングの普及を牽引するリモートワーク
新型コロナ感染は多くの産業に悪影響を与えたと同時に、クラウドコンピューティングを急速に加速させました。パンデミックの間、多くの企業はリモートワーク機能を拡張し、ITニーズの大きな変化を経験しました。クラウドは、「ニューノーマル」の需要増の中で、変更し適応する必要がある企業をサポートする完璧なツールです。
ある調査では、回答者の90%以上が、パンデミックによってクラウドの利用率が高まったと答えています。
Change from planned cloud usage due to COVID-19 | 新型コロナ感染によるクラウド利用計画からの変更 |
Total | トータル |
Enterprise | 企業 |
Slightly lower than planned | 計画を若干下回る |
Significantly lower than planned | 計画を大幅に下回る |
Slightly higher than planned | 計画を若干上回る |
Significantly higher than planned | 計画を大幅に上回る |
しかし、パンデミックにより、規模を縮小する必要のある企業にとっても、クラウドがいかに有用であるかということが明らかになりました。例えば、観光業界は底をつきましたたが、クラウドサービスを利用している企業は、必要なかった高価なデータセンターを維持する必要がなくなりました。2020年に世界のIT支出が減少しても、クラウド支出は6%以上伸び、総売上は2580億ドルに達した。専門家によると、市場は今後数年で倍増するとのことです。
74% of businesses expect their cloud spending to increase in 2021 | 74%の企業が2021年にクラウドへの支出が増加すると期待 |
In 2020, cloud spending has grown by 6.3% | 2020年、クラウド支出は6.3%が伸びている |
グローバルテクノロジーコンサルティング会社であるアクセンチュアは、2020年9月に30億ドルを投じて「クラウドファースト」を立ち上げました。この動きにより、アクセンチュアのクライアントをより早く、より効率的にクラウドに移行させるために活動する70,000人のクラウド専門家グループが誕生しました。アクセンチュアも、クラウド企業の買収にも力を入れています。直近では、Industrie&Coをはじめ、2020年に入ってからも数社を買収しています。
この業界の大規模な成長により、クラウドネイティブのソフトウェアエンジニアの需要はかつてないほど高まっています。特に、Software as a Service(SaaS)、Infrastructure as a Service(IaaS)、Platform as a Service(PaaS)の経験を持つ人材に対しては、その傾向が顕著です。
クラウドインフラサービスで33%のシェアを持っているアマゾンは、より多くのクラウドコンピューティングに関する人材を育成するために積極的に取り組んでいます。2020年12月に、今後5年間で全世界の2900万人にクラウドコンピューティングのスキルトレーニングを無償で提供すると発表しています。
3. マルウェアの開発が急増
サイバーセキュリティは、今後数年間、大いに注目を集めると思われます。
特にランサムウェアは、増加することが予想される脅威です。(ランサムウェアとは、身代金を支払わない限り、被害者の個人データを公開したり、アクセスを永久にブロックすると脅迫する、暗号ウイルスによるマルウェアの一種です)。
つまり、企業は資産を保護するための適切なツールを探すことになるのです。
「サイバーセキュリティ」の検索数が増えています。このトピックは5年間で200%も成長しています。
2020年、ランサムウェアの攻撃は2019年比で435%増加しました。ランサムウェアの最新トレンドの1つが、二重脅迫です。この悪質商法の手口では、攻撃者はまず企業のデータを身代金として預かります。その後、別の身代金が支払われなければ、そのデータを公開すると脅すのです。
IBMの報告によると、昨年IBM Security X-Forceが扱ったランサムウェア攻撃のうち、二重脅迫の攻撃が59%を占めているということです。
ランサムウェアから企業を守るためのセキュリティ対策は、2022年に進化しています。
IBMセキュリティの報告によると、セキュリティオートメーションを完全に導入している組織は、データ侵害が発生した場合、オートメーションを導入していない組織よりも358万ドル節約できるとのことです。サイバー保険に投資する組織も少なくないです。
実際、2020年5月にランサムウェア攻撃の被害に遭った全米最大の燃料パイプライン網を所有するコロニアル・パイプラインは、1500万ドルの保険に加入したそうです。サイバー保険の件数は、2016年から2019年にかけて60%増加しました。しかし、身代金や攻撃に伴う損失は非常に大きいため、保険会社は今後、こうした事象に対する補償を提供しなくなる可能性があります。
4. AI導入が加速
IDCの予測によると、世界の人工知能(AI)市場は2021年の間に16%以上増加し、3275億ドルになるということです。そして、2024年には5000億ドルに達すると期待しています。
ほぼすべての産業でいくつかのAIや機械学習が導入されており、私たちの家庭にも、気づいていないうちに、活用されています。
新型コロナ感染9によって導入率は大幅に上昇し、この加速は今後も続くと予想されます。ビジネスの世界では、AIソフトウェアがRPA(Robotic Process Automation)を通じてインパクトを与えています。RPAは、熟練労働者がより潜在的な価値の高いプロジェクトに集中できるように、ありふれたタスクを自動化するものです。
ある調査によると、50%以上の企業がRPAを活用しており、現在活用していない企業の約20%が今後2年以内に導入するとのことです。
下記は、2022年のRPAの活用例です。
- ヘルスケア:医師の診断や治療薬の処方を支援
- 物流:車両管理、ドライバーの行動分析
- 教育:成績評価の自動化・公平化
- Eコマース:チャットボットによる顧客サービス向上
- スマートホーム:エネルギー消費の分析
- ロジスティクス:自律走行車とルート最適化
- その他:プロセスの高速化・平滑化、より正確な予測
5. Rustの勢い
Rustは、ここ数ヶ月でブレイクアウトプログラミング言語です。StackOverflowのアンケートでは、過去4年間「最も人気のある言語」に選ばれています。そして、最もよく使われているプログラミング言語での第二位です。
Rustは、2010年にMozilla Researchによってリリースされました。しかし、2021年初頭、Rust Foundationの設立が発表されました。現在、Rust Foundationはすべての商標とインフラの資産を所有しています。Rustの魅力の一つは、「メモリセーフ」な言語であることで、ソフトウェアにメモリ関連のバグが発生するリスクを排除することです。また、スピード、セキュリティ、パフォーマンスも高く評価されています。
.NET開発者を対象にした最近の調査では、「学びたい言語は何ですか?」という質問に対して、Rustは第2位に選ばれています。また、人気ランキング「TIOBEインデックス」では、過去1年以内に18位も上昇しています。Facebook、Dropbox、Amazonなどの有名企業が、日常業務でRustを利用しています。そして、いくつかの大手企業もこの言語に投資しています。
6. IoTのさらなる普及拡大
スマートデバイスの普及に伴い、あらゆるものがまもなくIoTの一部となります。Gartner社によると、61%の企業がIoTの成熟度が高いレベルに達しており、IoTの誇大宣伝は止まる気配がありません。そのため、IoTはソフトウェア開発技術の中で最も人気が高いトレンドになるのです。
IoTが企業にもたらす可能性は大きいです。例えば、機器や設備の予知保全、車両や貨物のリアルタイム追跡、患者の健康状態のリアルタイムモニタリング、資産セキュリティの強化、エネルギーのスマート消費等です。この技術は、ヘルスケア、ロジスティクス、公共部門、製造業、接客業等の産業で最もよく知られています。
IoTは大きなものではなく、むしろ小さなものの積み重ねで、短期間に企業に大きな影響を与え、競争優位をもたらす可能性を持っています。最近の最も期待されている技術の一つであり、その可能性が最大限に引き出されるのはこれからです。
7.より良いユーザーエクスペリエンスを提供することを目指すプログレッシブウェブアプリケーション(PWA)
プログレッシブウェブアプリケーションは、そのネイティブアプリのようなユーザーエクスペリエンスにより、かなり以前から存在しています。PWAsは、どのブラウザからでもアクセスでき、どのようなデバイスでも実行することができます。さらに、PWAsは負荷が小さく、Webページへのアクセスも容易です。
PWAsは、企業がネイティブアプリの開発者を雇用せずに、クロスプラットフォームのモバイルアプリを作成するための費用対効果の高いアプローチです。シンプルな機能を持つアプリに最適なPWAsは、MVP(minimum viable product)として、より洗練されたアプリのアイデアをテストするためにも利用されます。
Statistaによると、2021年には、9%のEコマース企業がPWAに投資しています。さらに、8%のEコマース企業がすでにPWAを導入しているとのことです。
8. マイクロサービスアーキテクチャによるデプロイメントとスケーリングの簡素化
Technavioのレポートによると、クラウドマイクロサービス市場の成長が加速しているということです。2026年までのCAGRは25%を超え、市場価値は15億9000万ドル増加すると予測しています。
マイクロサービスアーキテクチャは、ソフトウェア開発における新しいアプローチと言えます。
旧来のアプローチであるモノリシック・アーキテクチャでは、すべてのアプリケーション・プロセスが結合され、単一のサービスとして実行されます。
すべてのコードがグループ化されているため、一つのプロセスを変更すると、アプリケーション全体が変更されることになります。このアプローチは、アジャイルでもスケーラブルでもありません。
1. MONOLITH |
1. モノリス |
2. MICROSERVICES |
2. マイクロサービス |
Users |
ユーザー |
Users Service |
ユーザーサービス |
Threads |
スレッド |
Threads Service |
スレッドサービス |
Posts |
ポスト |
Posts Service |
ポストサービス |
Node.js API Service |
Node.js APIサービス |
一方、マイクロサービスアーキテクチャは、独立したサービスとして構築されたモジュールで構成されたものです。これらのモジュールはそれぞれ特定のタスクや目標をサポートし、APIを経由して他のサービスセットと通信します。モジュールは、他のモジュールを変更せず、構築、管理、および変更することができます。この新しい構造では、マイクロサービスの開発時間が短く、簡単に拡張できます。また、他のプロジェクトで再利用することも可能です。問題が発生した場合、ITチームは時間とコストを節約できます。
モノリシックなアーキテクチャで何か問題が発生した場合、チームはソフトウェア全体でトラブルシューティング、テスト、そしてアップデートを行う必要があります。マイクロサービスでは、障害は単一のサービス内で分離され、修復され、再展開されます。
2021年のIBMの調査では、現在のマイクロサービス・ユーザーの88%が、マイクロサービス・アーキテクチャが開発チームに多くのメリットをもたらすことに同意または完全に同意し、87%がこのアプローチを採用する努力と費用に価値があることに同意または完全に同意していると回答しています。
9. ソフトウェア開発におけるブロックチェーンの活用が広がる
ブロックチェーン技術の多くの話題は、暗号通貨についてです。しかし、この技術はソフトウェア開発業界にも影響を及ぼしています。
全体として、ブロックチェーン市場における世界の支出は、2024年まで46%以上のCAGRで成長すると予想されます。世界中の企業が、ブロックチェーンを導入しています。
実際、2020年にデロイトが実施した調査では、55%の組織がブロックチェーンを戦略的優先事項トップ5に入っています。
ブロックチェーンを利用したソフトウェアのもう一つの例は、分散型アプリケーション(dApp)と呼ばれる特定のタイプのアプリです。その名の通り、コードが保存される中央集権的な場所がなく、特定の企業に所有されるわけでもありません。実用的には、「中間管理者」が不要であることを指します。例えば、AirbnbやUberのような会社が必要なく、ユーザーは直接プラットフォームにアクセスすることができます。
最も人気のある dApps の 1 つは、「Axie Infinity」というゲームアプリです。
その中で、ユーザーはNFTsであるAxiesと呼ばれるデジタルクリーチャーを育て、取引し、バトルすることができます。2021年末時点でプレイヤー数が830万人、1日のアクティブユーザー数が100万人います。しかし、2022年半ばにAxieネットワークはハッキングされて、6億2000万ドルを失い、プレイヤーの半数を失ったとの情報もあります。これは他のブロックチェーンゲームが、そうしたユーザーを自分たちのプラットフォームに誘い込むチャンスになりました。
10. ITアウトソーシングの需要は引き続き拡大する
2022年には、世界のソフトウェア産業は5,362億ドルに達し、オフショアソフトウェア開発サービス市場はCAGR11.72%で成長すると予想されています。
多くの企業が、刻々と変化する業界のニーズに対応するために必要なリソースの不足に気付いています。地元で有能なIT専門家を探すことが困難なため、企業は地元以外の地域(ニアショア又はオフショア)の高度なスキルがある専門家を持っているカスタムソフトウェア開発会社を検討しています。
アウトソーシングチームは、コーディング、テスト、製品管理を含む様々なタスクを行うことができ、様々なプログラミング言語に精通しています。IT企業の専門家にソフトウェア開発を委託することは増加傾向にあり、2022年にはさらに普及が進むと思われます。
ITアウトソーシングの需要が高まっている背景には、イノベーションを迅速かつコスト効率よく取り入れたいという企業のニーズがあります。
このようなニーズを満たすだけでなく、アウトソーシングを導入することで、企業は企業のコアコンピタンスに集中しながら、最も優秀な専門家を利用することができます。
管理ツールは常に改良されているため、効率的なワークフローや社内とアウトソーシング先の従業員との生産的な関係を確立することも容易になってきています。
11. 開発プロセスにセキュリティを組み込むDevSecOpsアプローチ
開発、セキュリティ、運用の組み合わせ(DevSecOps)は、ITライフサイクル全体を通じてセキュリティを統合する新しいソフトウェア開発アプローチです。
従来の開発アプローチでは、新しいソフトウェアは数カ月から数年おきにリリースされていたため、コードがテストやセキュリティプロセスを通過するのに十分な時間がありました。現在では、セキュリティテストが追いつかないほど新しい機能やコードが非常に速くリリースされています。
DevSecOpsの統合は、開発やリリースを遅らせたりすることなくセキュリティを実装する上で、非常に重要です。セキュリティが開発プロセスの最後の段階での懸案事項ではなく、開発者はコード内のセキュリティ問題をリアルタイムで修正することができます。その結果、ソフトウェアは、可能な限り安全でありながら、可能な限り迅速にデプロイされます。
まとめ
以上、今起きているソフトウェア開発の11の新潮流をまとめました。相互接続性、自動化、クラウドコンピューティングは、今後も急速に普及すると思われます。しかし、これらの開発には課題もあります。
新型コロナ感染の流行により、企業は既存のビジネスモデルの枠を超え、新しいデジタル戦略を採用する必要に迫られています。
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