テスト観点とは?定義や課題、リストの作り方をわかりやすく解説
ソフトウェアやシステムをテストする際には、多くの場合、評価すべき特定の側面や機能である「テスト観点」をまとめたリストを作成してから実施します。テスト設計で仕様書を作成するフェーズにおいてテスト観点を定めることでテストの目的や焦点が明確になり、効果的なテストケースを作成することができ、テストプロセス全体が効率化されます。
本記事では、テスト観点とは何か、その重要性や課題、テスト観点リストの作り方についてわかりやすく解説します。
目次
テスト観点とは?
テスト観点(test perspective)とは、「ソフトウェアやシステムをテストする際に、評価すべき特定の側面や機能」を指します。
テスト観点は、テストプロセスを計画、設計、実行する際に、目標となる品質要素を明確にすることで、効果的なテストケースを作成し、重要な問題を特定できるようにする役割があります。これは、製品やサービスの品質向上に大きく貢献する重要な要素であると言えます。
テスト観点が必要な理由
テスト観点が必要な理由は、以下のような点が挙げられます。
品質保証の効率化:
テスト観点を明確にすることで、テストの目的や焦点が明確になり、効果的なテストケースを作成できるようになります。これにより、テストプロセス全体が効率化され、品質保証の精度が向上します。
問題の特定と対応:
テスト観点をもとにテストケースを作成し、実行することで、重要な問題や不具合を効果的に特定できます。これにより、開発チームが問題に対処し、改善を行うことが容易になります。
リスクの低減:
テスト観点を明確にしてシステム全体を網羅的に評価することで、機能や性能、使いやすさ、セキュリティ、互換性などのリスクを低減できます。これにより、顧客やユーザーに高品質な製品を提供できるようになります。
コミュニケーションの改善:
テスト観点を明確にすることで、開発チームやテストチーム、関係者間のコミュニケーションが改善されます。明確なテスト観点を共有することで、互いの理解が深まり、問題解決の効率化や品質向上につながります。
プロジェクトの進捗管理: テスト観点を定義することで、テストの範囲や進捗状況を明確に把握できます。これにより、プロジェクトの進捗管理が容易になり、期限内に品質の高い製品をリリースすることが可能になります。
テスト観点のデメリット
テスト観点は、品質保証やプロジェクト管理において重要な役割を果たしますが、デメリットも存在します。
まず、過剰なドキュメント化が挙げられます。テスト観点を詳細に洗い出し、記録することは品質保証のために重要ですが、あまりにも細かく観点を定義しすぎると、時間とリソースの無駄につながることがあります。ドキュメント作成に費やす時間が長くなり、開発やテストの実作業に割く時間が減少することが懸念されます。
また、テスト観点が不十分または不適切である場合、効果的なテストケースを作成できず、重要な問題が見逃されるリスクがあります。これは、テスト観点が曖昧であったり、特定の機能や要素に偏りすぎていたりすることが原因となります。
さらに、テスト観点の過剰な依存が問題となることがあります。テスト観点は、テストの目標や焦点を明確にするためのガイドラインであり、全ての問題を網羅するものではありません。テスト観点に固執しすぎると、観点外の問題や隠れたリスクを見逃してしまう可能性があります。
加えて、テスト観点の定義や維持にはコストがかかります。開発プロジェクトの初期段階でテスト観点を定義し、開発が進むにつれてそれを更新し続ける必要があります。これにより、プロジェクトのコストが増加する場合があります。
テスト観点に含める項目
テスト観点には以下のような要素があります。
機能テスト観点
ソフトウェアやシステムの特定の機能が、要件に従って正しく動作するかを評価する観点です。例えば、ユーザーがログインできるか、検索機能が正しく動作するか、フォームに入力したデータが適切に保存されるかなどが含まれます。
性能テスト観点
ソフトウェアやシステムが、性能要件(レスポンスタイム、スループット、リソース使用率など)を満たしているかを評価する観点です。例えば、多くのユーザーが同時にアクセスした場合の応答速度や、データ処理速度、システムのスケーラビリティが含まれます。
ユーザビリティテスト観点
ソフトウェアやシステムが、ユーザーにとって使いやすいかどうかを評価する観点です。例えば、インターフェースの直感性、操作の簡便さ、エラーメッセージの明確さなどが含まれます。
セキュリティテスト観点
ソフトウェアやシステムが、セキュリティ要件を満たしているかどうかを評価する観点です。例えば、データの暗号化、認証・認可メカニズム、脆弱性の検出などが含まれます。
互換性テスト観点
ソフトウェアやシステムが、さまざまな環境やデバイスと互換性があるかどうかを評価する観点です。例えば、異なるブラウザやオペレーティングシステム、ハードウェア環境での動作検証が含まれます。
テスト観点リストとは
テスト観点リストとは、テスト計画やテスト設計を行う際に、ソフトウェアやシステムの評価すべき特定の側面や機能を網羅的にリスト化したものです。テスト観点リストは、テストプロセスを効率化し、高品質な製品をリリースするために役立ちます。テスト観点リストを作成する際には、上述した「機能観点」「性能観点」「ユーザビリティ観点」「セキュリティ観点」「互換性観点」の5つの観点を含めるようにします。
テスト観点リストの作成例
以下に、5つの観点を考慮したテスト観点リストの例を表形式で作成しました。これは、あくまで一例であり、実際のプロジェクトやアプリケーションに応じてカスタマイズする必要があります。
カテゴリー | テスト観点 |
機能観点 | ログインが正常に機能する |
検索機能が正常に機能する | |
データ入力・保存機能が正常に機能する | |
ユーザー登録が正常に機能する | |
パスワードリセットが正常に機能する | |
性能観点 | ページのレスポンスタイムが適切である |
同時アクセス時のシステムの挙動 | |
リソース使用率が許容範囲内である | |
ユーザビリティ観点 | 画面レイアウトが適切である |
操作性が良好である | |
エラーメッセージが明確でわかりやすい | |
セキュリティ観点 | データの暗号化が適切である |
認証・認可メカニズムが正常に機能する | |
脆弱性の検出と対策が適切である | |
互換性観点 | 異なるブラウザでの動作検証 |
異なるオペレーティングシステムでの動作検証 | |
異なるハードウェア環境での動作検証 |
このテスト観点リストを使用することで、各観点に基づいたテストケースを作成し、効果的なテスト活動を実施することができます。また、テスト観点リストは、プロジェクトの進捗に応じて随時更新し、適切なテスト計画やテスト設計が行われるようにすることが重要です。
まとめ
本記事では、テスト観点の定義や必要な理由、課題、テスト観点リストの作成例についてご紹介しました。従来のシステムやソフトウェアと異なり、現在のシステムは非常に機能が複雑です。そのため、これまでよりもテストに多くのコストと時間を要します。抜けもれなく、効率よくテストを実施するためにもテスト観点は重要な役割を担っていると言えるでしょう。読者のみなさんも現在取り組んでいるプロジェクトに取り入れてみてはいかがでしょうか。
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