金融リーダーに問う: オープンバンキングの本当の価値

オープンバンキングは、単なる流行語ではなく、銀行や金融機関のサービスのあり方を実際に変えつつあります。
APIを介したデータ連携によって、決済やローン、投資といった日常的なサービスがより速く、便利に、そして安全に提供できるようになっています。
本記事では、銀行がオープンバンキングを活用することで得られる具体的なメリットを整理し、実際の活用の方向性について考えていきます。
目次
なぜオープンバンキングが注目されるのか
オープンバンキングは、今や世界の金融業界全体で大きな潮流となっています。銀行が保有するデータをAPIを通じて安全に外部と共有し、新しいサービスを生み出す仕組みは、顧客の期待や規制の変化、そしてテクノロジーの進化によって加速しています。
日本でもこの動きは例外ではありません。
- 規制面では、欧州のPSD2に続き、日本でも改正銀行法によりAPI公開やフィンテック企業との連携が進められています。
- 顧客ニーズの観点では、キャッシュレス決済やスマートフォンバンキングの普及に伴い、スピーディかつ利便性の高いサービスへの期待が高まっています。
- 技術面では、クラウドやAI、ブロックチェーンといった新しい技術が実用化され、銀行にとってもデータ活用の幅が広がっています。
こうした背景から、オープンバンキングは単なる一時的な流行ではなく、銀行が今後の競争力を維持・強化していく上で不可欠な戦略テーマとなっているのです。
オープンバンキングがもたらす価値

オープンバンキングの魅力は、銀行が単独では実現できなかったサービスや収益モデルを広げられる点にあります。顧客データや口座情報を安全に外部と連携することで、金融サービスは「閉じた仕組み」から「開かれたエコシステム」へと進化します。
- 新しい収益機会の創出
従来は銀行外で行われていた決済、投資、保険といったサービスを、フィンテックや他業界との連携を通じて自らのプラットフォームに取り込み、新しいビジネスモデルを構築できます。たとえばAPIを介した決済連携により、銀行は利用料収入を得ることが可能になります。 - 顧客体験(CX)の向上
残高確認や送金といった基本機能に加え、家計管理アプリとの連携やローンの即時審査など、スピードと利便性を兼ね備えた新しいサービスを提供できます。これにより「選ばれる銀行」としてのブランド力が高まります。 - エコシステムの構築
銀行が単なる「金融サービスの提供者」にとどまらず、さまざまなプレーヤーを巻き込む「プラットフォーム」へと進化できるのも大きな価値です。フィンテック企業、EC事業者、さらには非金融業界までを含む広範なパートナーシップを築くことで、顧客のライフスタイル全体を支える存在になれます。
つまりオープンバンキングは、銀行にとって単なる技術的選択肢ではなく、成長戦略そのものといえるのです。
価値を実現するための条件
オープンバンキングは新しい可能性を広げる仕組みですが、その価値を実際のビジネス成果につなげるには、いくつかの前提条件があります。
まず欠かせないのが APIセキュリティ です。日本でも近年、フィンテック連携を通じた不正送金事件が報じられました。便利さを提供する一方で、もし外部接続に脆弱性があれば、顧客資産や信用を一瞬で失いかねません。利便性とセキュリティをどう両立させるかは、常に金融機関に突きつけられる課題です。
次に、 データガバナンス の整備が不可欠です。顧客データをどの範囲まで共有するのか、どのように同意を得るのか。例えば欧州のPSD2では「顧客同意」が明確にルール化されていますが、日本でも同様に透明性のある管理が求められています。ガバナンスが曖昧なままでは、規制リスクだけでなく、顧客からの信頼も揺らぎます。
さらに、オープンバンキングを持続的に活用するには パートナーマネジメント も重要です。フィンテックや外部ベンダーとの協業は一度契約して終わりではなく、システム更新や規制対応のたびに調整が必要となります。例えば、キャッシュレス決済や投資アプリとの連携を始めても、パートナー側の仕様変更に追随できなければ、サービスはすぐに使いづらくなってしまいます。
このように、オープンバンキングの価値を実現するためには、単なる技術導入だけでなく、運用面や体制づくりまでを見据えた包括的な取り組みが求められます。
では、実際にこれらの課題をどう解決し、価値を形にしていくのか。その具体的なアプローチを、次にCMC Japanの事例を交えてご紹介します。
銀行向けCMC Japanのソリューション

オープンバンキングの価値を本当に形にするためには、技術とビジネスの両面を理解し、現場に即した解決策を提示できるパートナーが欠かせません。CMC Japanは、これまで日本やアジアの金融機関と共に、API基盤の構築やコアバンキングの統合、さらにはセキュリティやモニタリング体制の強化を支援してきました。
例えば、既存の勘定系を維持しながら新しいデジタルチャネルを追加したい銀行に対しては、API Gatewayの導入とバックエンド統合を組み合わせ、短期間で外部サービスとの接続を可能にしました。これにより、新しいモバイルアプリの立ち上げや決済サービスとの連携がスムーズに進み、顧客体験の改善に直結しました。
また、データガバナンスやセキュリティ監視の仕組みについても、単なる導入支援に留まらず、運用チームが自走できる体制づくりを重視しています。ツールを導入して終わりではなく、その後のモニタリング方法や改善プロセスまで一緒に設計することで、長期的に安定した運用を実現しています。
こうしたアプローチの根底にあるのは、「技術の導入」ではなく「ビジネス課題の解決」です。銀行ごとに異なる環境や戦略を踏まえ、最適なステップを設計し、段階的に移行を進める。これがCMC Japanの強みです。
💡 私たちは一方的にソリューションを押し付けるのではなく、まずお客様の課題や構想をじっくりお伺いすることから始めたいと考えています。
もし御行でオープンバンキングやAPI活用に関する検討を進めているようでしたら、ぜひ一度ご相談ください。CMC Japanのエンジニアチームと共に、最適なアプローチを検討し、成長につながる具体的な一歩を設計いたします。