ファイルシステムとは|主な機能や種類を詳しく解説
ファイルシステムとは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)が、HDD、SSD、フラッシュドライブなどのストレージデバイスにファイルやデータを整理して保存するための機能です。本記事では、データの保存や閲覧、編集を支えているファイルシステムとは何か、具体的にどのような種類があり、それぞれどのような特徴があるのかについて詳しく解説します。
目次
1.ファイルシステムとは
ファイルシステムとは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)が、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、フラッシュドライブなどのストレージデバイスにファイルやデータを整理して保存するための機能です。
ファイルシステムを、文書を保存するファイリングキャビネットに例えてみましょう。ファイリングキャビネットの各フォルダには他のフォルダやファイルが含まれ、必要なものを簡単に見つけることができます。同様に、ファイルシステムは、ディレクトリとサブディレクトリの階層構造でファイルとデータを整理します。
また、ファイルシステムは、ファイルの整理だけでなく、ファイルの圧縮、暗号化、アクセス制御などの機能も提供できます。また、ストレージデバイス上のエラーをチェックし、修復するなどのメンテナンスタスクも実行できます。
さらに、OSが異なれば、当然使用するファイルシステムも異なります。たとえば、WindowsはNTFSというファイルシステムを使用し、macOSにおいてはAPFSというファイルシステムを使用します。ただし、FAT32やexFATなど、複数のオペレーティングシステムで使用できるファイルシステムもあります。(それぞれの具体的な特徴については後ほどご紹介します。)
簡単にまとめると、ファイルシステムは、ユーザーがファイルやデータを構造化し、効率的に管理することができるようにするコンピュータシステムの重要な機能であると言えます。
2.ファイルシステムの3つの機能
前の項でも少し触れましたが、ファイルシステムには、データを効率的に管理するためにさまざまな機能があります。以下に、その中でも代表的な「ファイルの圧縮」、「暗号化」、「アクセス制御」という3つの機能について、わかりやすく解説します。
ファイルの圧縮
ファイルの圧縮とは、データを小さくすることで、ディスクの使用容量を節約することができる機能のことです。ファイルシステムがこの機能をサポートしている場合、ファイルを圧縮することで、ストレージの容量を節約することができます。
ただし、圧縮されたファイルを読み書きする際には、解凍が必要なため、読み書きに時間がかかる可能性があります。また、CPUの処理負荷が増えることもあるため、パフォーマンスに影響を与える場合があります。
暗号化
ファイルの暗号化とは、データを暗号化することで、不正なアクセスから保護する機能のことです。ファイルシステムがこの機能をサポートしている場合、パスワードや鍵を知らない限り、暗号化されたファイルを解読することができません。これにより、機密情報を保護することができます。
ただし、暗号化されたファイルを読み書きする際には、復号化が必要なため、読み書きに時間がかかる可能性があります。また、暗号化には専用のソフトウェアやハードウェアが必要な場合があるため、その際には導入コストがかかるというデメリットがあります。
アクセス制御
アクセス制御とは、ファイルに対するアクセス権限を制御する機能のことを指します。ファイルシステムがこの機能をサポートしていれば、ファイルやデータにアクセスできるユーザーを制限することができます。
たとえば、パスワードを知っているユーザーだけがファイルにアクセスできるように設定することができます。また、アクセス権限を制御することで、不正アクセスを防止することができます。
ただし、アクセス権限を細かく設定しすぎると、管理が複雑になり、扱いにくくなるというデメリットがあります。適切なアクセス権限を設定することで、情報漏洩やデータの改ざんを防止できますが、設定を誤ると必要な操作ができなくなる場合があります。
そのため、アクセス権限の設定は慎重に行う必要があります。また、ファイルの圧縮や暗号化によって、ディスクスペースの効率化やデータのセキュリティ向上が期待できますが、処理に時間がかかる場合があるため、利用する場合は注意する必要があります。
3.ファイルシステムの8つの種類
最後に、8つのファイルシステムとそれぞれの概要や特徴について詳しく解説していきます。
HFS+
HFS+(Hierarchical File System Plus)とは、Appleが開発したファイルシステムの一つであり、1998年にMac OS 8.1で導入されました。HFS+は、HFSの後継として開発され、現在でもMac OSやmacOSなどのAppleのオペレーティングシステムにおいて使用されています。
HFS+の主な特徴は以下の通りです。
・ジャーナリング
HFS+は、ジャーナリングと呼ばれる技術を採用しています。ジャーナリングとは、ファイルシステムの安定性を高めるための技術であり、システムクラッシュや電源障害などの障害が発生した場合においても、ファイルシステムを復元することができます。
・ファイル名の長さ
HFS+は、ファイル名の長さに制限がないため、非常に長いファイル名を使用することができます。
・マルチフォーク
HFS+は、1つのファイルに対して複数のデータフォークを持つことができます。これにより、1つのファイルを異なるバージョンで保存することができます。
・Unicodeサポート
HFS+は、Unicodeをサポートしています。Unicodeとは、多言語対応のための標準的な文字コードであり、HFS+は多言語のファイル名をサポートすることができます。
・容量の有効活用
HFS+は、ファイルの断片化を最小限に抑えるための技術を採用しています。これにより、ファイルの読み込み速度が向上し、ストレージ容量を効率的に使用することが可能です。
以上の内容をまとめると、HFS+は、ジャーナリングなどの技術により、ファイルシステムの安定性が高く、Unicodeや多言語対応という特徴があります。また、長いファイル名やマルチフォークの機能もあり、ファイルの効率的な管理が可能です。ただし、HFS+はAppleの独自規格であるため、他のオペレーティングシステムでは使用することができず、クロスプラットフォームにおけるファイルの共有などに制限があります。そのような理由から、macOSでは「HFS+」から次に紹介する「APFS」に移行されつつあります。
APSF
APFS(Apple File System)は、Appleが開発した新しいファイルシステムです。2017年にmacOS High Sierraで導入され、現在ではiOS、iPadOS、tvOS、watchOS、macOSなど、Appleの全てのオペレーティングシステムで使用されています。
APFSの主な特徴は以下の通りです。
・ジャーナリング
APFSは、HFS+同様にジャーナリングを採用しており、データの安全性を高めています。
・スペースの有効利用
APFSは、ファイルの断片化を最小限に抑える技術を採用しています。また、ストレージ容量の効率的な使用が可能になり、ファイルの管理が簡単になります。
・シンクロナイズドスナップショット
APFSは、システムの状態を保存することができるシンクロナイズドスナップショットと呼ばれる機能を備えています。これにより、容易にシステムのバックアップや復元を実行することができます。
・メタデータの暗号化
APFSは、ファイルの暗号化に加え、メタデータ(ファイル名や作成日時などの情報)も暗号化することができます。
・タイムスタンプの精度
APFSは、HFS+よりもタイムスタンプの精度が高いため、ミリ秒単位でファイルの更新日時などを管理することができます。
以上のことから、APFSは、ジャーナリングやスペースの有効利用など、HFS+の長所を受け継ぎつつ、新しい技術を取り入れたファイルシステムと言えます。また、シンクロナイズドスナップショットやメタデータの暗号化など、新しい機能も備えています。ただし、APFSにはHFS+との互換性がないため、古いMacでは使用できない場合があります。
NTFS
NTFS (New Technology File System)は、Microsoft Windowsオペレーティングシステムで使用されるファイルシステムの一つであり、Windows NT以降のバージョンで使用されています。
NTFSは、多くの改良が加えられたファイルシステムで、以下のような特徴があります。
・高速なアクセス速度
NTFSは、ファイルの検索や読み込みに要する時間を短縮するために、ファイルの物理的な配置を最適化しています。
・大容量ファイルのサポート
NTFSは、1つのファイルのサイズが4GBを超える大容量のファイルをサポートします。
・セキュリティ機能
NTFSは、ファイルやフォルダにアクセスするための権限を設定できるため、セキュリティが高いファイルシステムとしても知られています。
・ディスククォータ制限
NTFSは、ディスク容量の一部を特定のユーザーに割り当て、ディスクの容量を制限することができます。
・ファイル圧縮
NTFSは、ファイルの圧縮機能を提供しているため、ディスクの容量を節約することができます。
・透過的な暗号化
NTFSは、ファイルやフォルダを暗号化することができ、透過的に(暗号化/復号化を自動的に処理)アクセスすることができます。
・チェックディスク機能
NTFSは、他のファイルシステムと比べ、ストレージデバイスのエラーを検出して修復するチェックディスク機能を提供します。他のファイルシステムに比べて影響を与える可能性が低いとされています。
NTFSはWindowsのデフォルトのファイルシステムとして使用されており、その汎用性や高い機能性から、多くのユーザーによって利用されています。
FAT32
FAT32は、Microsoft Windowsオペレーティングシステムで使用されるファイルシステムの一つであり、Windows 95 OSR2以降のバージョンで使用されています。
FAT32の主な特徴は以下の通りです。
・単純な構造
FAT32は、他のファイルシステムに比べて単純な構造を持ち、それによって汎用性が高く、ほとんどのオペレーティングシステムで読み書きすることができます。
・サポートされるストレージサイズ
FAT32は、2TBまでのストレージデバイスに対応しています。
・互換性の高さ
FAT32は、古いバージョンのWindowsや、いくつかの非Windowsオペレーティングシステムでも利用することができます。
・ディスク使用スペースの最適化
FAT32は、ファイルの格納方法を適切に管理することで、ディスク上の空き領域を最適化します。
・ファイルとフォルダ名における制限
FAT32は、ファイル名やフォルダ名の長さに制限があり、それぞれ8文字と3文字以下に制限されています。
・ファイルサイズの制限
FAT32は、単一のファイルのサイズが4GBと上限が設定されています。
以上のことから、FAT32は、NTFSに比べて機能的な制限があるため、大容量のファイルを扱う場合や、高度なセキュリティ機能が必要な場合には向いていません。ただし、単純なファイルシステムであるため、小規模のストレージデバイスに適しており、USBフラッシュドライブやSDカードなどの小型デバイスによく使用されます。
exFAT
exFATは、Microsoftが開発したファイルシステムの一つであり、FAT32の後継として開発されました。exFATは、Windows Vista以降のバージョンで使用されています。
exFATの主な特徴は以下の通りです。
・より大きなストレージサイズ
FAT32よりも大きなストレージデバイスに対応しており、最大容量は128PBです。
・ファイルサイズの制限がない
FAT32のような制限がなく、単一のファイルサイズは16EBまでサポートされています。
・シンボリックリンク
シンボリックリンクは、異なる場所のファイルを参照するために使用されます。
・メタデータの冗長性
exFATは、メタデータの冗長性を高めることによって、データの損失を防止します。
・ファイルとフォルダ名における制限
FAT32と同じく、ファイル名やフォルダ名の長さに制限がありますが、それぞれ255文字に増やされています。
・互換性の高さ
exFATは、WindowsやmacOS、Linux、Androidなどの様々なプラットフォームでサポートされています。
以上のことから、exFATは、FAT32よりも大容量のファイルを扱う場合に向いています。また、複数のプラットフォームで利用する場合や、USBフラッシュドライブや外付けハードドライブなどのストレージデバイスに適しています。ただし、NTFSと比較して高度なセキュリティ機能が欠けているため、機密性の高いデータを保管する場合には注意が必要です。
ReFS
ReFS(Resilient File System)は、Microsoftが開発したファイルシステムの一つであり、Windows Server 2012以降で使用されています。ReFSは、NTFSの後継として開発されました。
ReFSの主な特徴は以下の通りです。
・ストレージの信頼性
ReFSは、データの耐久性と信頼性を高めるために設計されています。エラーの修正やストレージの不具合に対処するための様々なメカニズムが組み込まれています。
・スケーラビリティ
ReFSは、大規模なストレージシステムをサポートするように設計されており、ストレージサイズに制限がありません。
・柔軟性
ReFSは、可変サイズのブロックをサポートしています。これにより、より効率的なデータ保存が可能になります。
・ファイルシステムの安定性
ReFSは、システムのクラッシュや電源障害などが発生した場合でも、ファイルシステムの安定性を維持することができます。
・ストレージアクセスの高速化
ReFSは、高速なストレージアクセスを可能にするように設計されています。高速なアクセスを実現するため、ReFSは、CPUのマルチスレッド処理にも対応しています。
・ファイルとフォルダ名における制限
ReFSは、FAT32やexFATと同じく、ファイル名やフォルダ名の長さに制限がありますが、それぞれ255文字までと制限が緩和されました。
以上のことから、ReFSは、大規模なストレージシステムをサポートするために開発されており、高い信頼性と高速なストレージアクセスを提供することができるファイルシステムと言えます。また、ストレージの管理が容易になるため、企業や組織などの大規模なデータセンターにおいても利用されることがあります。ただし、ReFSはNTFSよりも高い要件を持つため、一般的なパソコンやノートパソコンなどの個人向けのコンピューターでは使用されることは少ないです。
UDF
UDF(Universal Disk Format)は、光ディスクやリムーバブルディスクなどの記録媒体に使用されるファイルシステムの1つです。UDFは、オーディオCDやDVD、Blu-rayなどの規格で採用されています。
UDFの主な特徴は以下の通りです。
・ポータビリティ
UDFは、異なるオペレーティングシステム間でのデータの共有に適しています。Windows、macOS、Linuxなど、様々なプラットフォームにおいてサポートされています。
・より大きなファイルサイズ
UDFは、FAT32やNTFSなどの他のファイルシステムよりも大きなファイルサイズをサポートしています。UDF 2.01以降では、1ファイルあたりのサイズの制限は8EB(エクサバイト)までサポートされています。
・より長いファイル名
UDFは、他のファイルシステムよりも長いファイル名をサポートしています。UDF 2.01以降では、ファイル名の長さは255バイトまでサポートされるようになりました。
・データの保護
UDFは、CRCやリトライ機能などの技術を使用して、データの保護を行います。また、書き込みが完了するまで、データの読み出しもできないようにする書き込み保護機能を持っています。
・パーティションレイアウトの柔軟性
UDFは、複数のパーティション(ハードディスク内の区画)をサポートしています。また、パーティションレイアウトを変更することができるため、記録媒体の容量を最大限に活用することができます。
以上の内容をまとめると、UDFは、主に光ディスクやリムーバブルディスクなどで使用されるため、大容量のストレージには向いていませんが、ポータビリティやデータの保護に優れているため、データの共有や交換に適しています。また、規格化されているため、様々なプラットフォームにおける互換性が保証されているファイルシステムと言えます。
XFS
XFSは、SGI(Silicon Graphics International)が開発したファイルシステムであり、1994年のIRIX 5.3で初めて公開されました。現在では、Linuxの標準的なファイルシステムとして、多くのLinuxディストリビューションで使用されています。
XFSの主な特徴は以下の通りです。
・スケーラビリティ
XFSは、非常に大容量のファイルシステムをサポートしており、1ファイルあたり最大8EB(エクサバイト)のデータを保存することができます。また、非常に高いI/Oスループットを持っているため、大規模なデータベースやWebサイトのような高負荷なアプリケーションに適しています。
・ジャーナリング
XFSは、ジャーナリングファイルシステムを採用しています。これにより、システムのクラッシュや電源断などの問題が発生しても、ファイルシステムを容易に復旧することができます。
・メタデータの最適化
XFSは、ファイルの割り当てや削除に必要な時間を短縮するため、メタデータの最適化技術を採用しています。
・ファイルの圧縮
XFSは、ファイルの圧縮をサポートしており、ストレージ容量の節約に役立ちます。
・ストライピング
XFSは、RAID構成などのストライピングにも対応しており、高速なデータアクセスを実現できます。
以上のことから、XFSは、大容量のファイルシステムや高負荷なアプリケーションに適したファイルシステムであるため、多くの企業や組織で使用されています。また、Linuxの標準的なファイルシステムとして採用されているため、Linuxのシステム管理者や開発者にとっても重要なファイルシステムとなっています。
まとめ
本記事では、ファイルシステムの概要や3つの機能、8つのファイルシステムとそれぞれの特徴についてご紹介しました。私たちは、普段何気なくデータを保存、閲覧、編集をしていますが、それらはすべてファイルシステムという機能が実現してくれているからということを理解していただけたのではないでしょうか。
また、システム開発をアウトソーシングする場合は、どのファイルシステムを用いるのかを慎重に選ぶようにしましょう。複数のOSで使用することが想定される場合は、先ほど紹介した8つのファイルシステムの中でも汎用性の高いものを選択する必要があります。その点においては、ベンダーに事前に対応しているのか聞いてみましょう。
CMC Japanの紹介
CMC Japanはベトナム第2位のICT企業である「CMC Corporation」の日本法人です。CMCグループは30年の開発実績および2200人以上のITエンジニアを擁しており、オフショアによるWebシステム開発、Webサイト制作、テスティングサービス、クラウドマイグレーションなどさまざまなITソリューションをご提供しております。迅速かつリーズナブルなオフショア開発をお求めの企業様は、お気軽にご相談ください。