CIO・CTO必見:2026年に向けたAIの3つのポイント
AIは、2026年においてもCIOやITリーダーにとって最重要テーマであり続けるでしょう。
Gartnerの調査によれば、AIおよび生成AIはすでに世界のCIO投資優先度で第1位となっており、2026年に向けた戦略的テクノロジートレンド10項目のうち、6項目がAI関連とされています。
この状況を見ると、AIを中心に据えたIT戦略は、ごく自然な選択に映ります。一方で、計画を2026年に向けて具体化する今だからこそ、CIOは次の点をあらためて考える必要があります。
AIを軸に据えることで、IT戦略の視野は本当に広がっているのか。あるいは、知らず知らずのうちに選択肢を狭めてはいないか。
本記事では、AIが引き続き中核であることを前提にしながら、2026年に向けてCIOが考えるべき3つの視点を整理します。
目次
①AIを単独で捉えないという戦略的判断
近年、多くの企業がAI活用に取り組んでいますが、McKinseyの調査では、AI導入企業のうち、明確な事業価値を実感できているのは約27%にとどまると報告されています。この数字が示しているのは、技術そのものの限界ではなく、AIの位置づけ方の問題です。
成果を出している企業に共通しているのは、AIを単体の施策として扱わず、イノベーション全体の中に組み込んでいる点です。短期的な業務改善、中期的な戦略投資、長期的な実験的取り組みを整理し、その中でAIが果たす役割を明確にしています。
2026年に向けて重要なのは、「AIを優先するかどうか」ではなく、 「AIをどの文脈で、どのレベルまで優先するのか」を戦略として定義することです。
②AI戦略は事業戦略と結びついてこそ意味を持つ
GartnerのCIOサーベイ(2025年)では、6割以上のCIOが、AI投資と事業成果の関係を十分に説明できていないと回答しています。AIへの期待が高まる一方で、事業との接続が曖昧なままでは、戦略としての説得力を持ちません。
2026年を見据えると、IT戦略に求められる役割は、コスト削減や効率化にとどまりません。自然災害、地政学リスク、サプライチェーンの変動など、不確実性が常態化する環境において、企業が変化に適応できる力を支えることが重要になります。
この文脈で注目されているのが、クラウドネイティブな基盤、プラットフォーム型アーキテクチャ、柔軟な自動化基盤です。エージェント型AIは、これらの基盤と組み合わさることで初めて、戦略的な価値を発揮します。
③価値はAI単体ではなく「技術の組み合わせ」から生まれる
AIに注目が集まる一方で、他の技術トレンドが見過ごされがちです。しかしIDCの分析によれば、高い成果を上げているAI施策の40%以上は、複数の技術を組み合わせて活用されています。
たとえば、製造や物流の分野では、AIはIoTやエッジコンピューティングと連携することで、初めてリアルタイムな判断や最適化を可能にします。金融や保険の分野でも、AIは単独ではなく、データ基盤や業務自動化と一体化することで価値を生み出しています。
ここで重要なのは、AIを「万能な存在」として扱わないことです。AIはあくまで構成要素の一つであり、他の技術とどう組み合わせるかによって、その効果は大きく変わります。
2026年に向けた戦略では、「AIで何ができるか」ではなく、 「AIをどの技術の中に、どう組み込むか」という視点が求められます。
おわりに
AIは2026年も、間違いなくIT戦略の中心にあります。しかし、AI-firstがAI-onlyになってしまえば、戦略は持続しません。
これからのCIOに求められるのは、AIを核としながらも、データ、基盤、運用、そして事業戦略との関係を含めて、全体を設計する視点です。2026年は、AIをさらに増やす年ではありません。AIを中心に据えつつ、その先を見据えた戦略を整える年です。その準備ができているかどうかが、AIを一過性の流行で終わらせるか、長期的な競争力に変えるかの分かれ道になるでしょう。
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