ブロックチェーン開発の基礎知識 ユースケース、仕組み、注意点
1. ブロックチェーン開発とは?
ブロックチェーンとは、デジタル資産のデータの暗号化されたブロックが保管されている、連鎖したりされるデジタル台帳またはデータベースで、データの時系列的な信頼できる唯一の情報源を形成します。
ブロックチェーン開発とは、ネットワーク内で取引を安全に記録し、資産を追跡する、共有され、変更できない分散型台帳技術(distributed ledger technology、略称:DLT)を作成するプロセスです。
ブロックチェーン技術の仕組みは、Googleドキュメントに例えると分かりやすいでしょう。 Googleドキュメントは、グループで共有されてもコピーや譲渡されることはなく、その代わりに単に分散されます。これにより、分散化された配布チェーンが構築され、誰もが同時にベースドキュメントにアクセスできるようになります。他の関係者からの変更を待ってロックアウトされることはありません。また、ドキュメントに対するすべての変更はリアルタイムで記録され、変更は完全に透明化されます。しかし、Googleドキュメントとは異なり、ブロックチェーン上のオリジナルのコンテンツやデータは、一度書き込まれると変更できないため、セキュリティレベルが高くなります。
もちろん、ブロックチェーンはGoogleドキュメントより複雑ですが、この例えはブロックチェーン技術の重要なアイデアを強調しているため、適切です。
ブロックチェーンの特徴をまとめると、以下のようになります。
- デジタル資産はコピーや譲渡されるのではなく、単に分散されるのみ
- デジタル資産は分散型であるため、複数の当事者がそれを管理し、リアルタイムでアクセスすることができる
- ブロックチェーンの台帳は公開であり、すべての変更が記録されるため、完全性と信頼性が保たれる
- ブロックチェーン技術は、その台帳が一般に公開され、固有のセキュリティ対策で構築されているため、ほとんどすべての業界で最有力候補となっている
2. ブロックチェーン技術の応用とユースケース
ブロックチェーン技術は現在、ゲームの革新、医療データの保護、食品サプライチェーンの透明性の提供、そしてデータや所有権の管理方法の全体的な変更するために利用されています。ここでは、ブロックチェーンのユースケースと応用の例を紹介します。
2.1. 暗号通貨におけるブロックチェーン開発
ブロックチェーンは、ビットコインのような暗号通貨の基盤を形成しています。米ドルは連邦準備理事会によって管理されています。ユーザーのデータや通貨は、この中央集権システムのもとでは、技術的に銀行や政府振り回されます。もし銀行がハッキングされれば、顧客の個人情報は危険にさらされます。銀行が破綻したり、政府が不安定な国に住んでいたりすると、通貨の価値も危うくなる可能性があります。2008年には、いくつかの破綻した銀行が、部分的に税金を使って救済されました。このような懸念から、ビットコインは最初に構想され、開発されました。
ブロックチェーンは、ビットコインやその他の暗号通貨を、コンピュータのネットワークに活動を広げることで、分散的に活躍させます。これにより、リスクが下がるのみならず、多くの処理手数料や取引手数料の削減につながります。
2.2. NFTゲームにおけるブロックチェーン開発
現在、中央集権モデルが大部分のオンラインゲームで採用されています。これは、すべての関連データが、ゲームの管理者が完全な権限を持つサーバーに保管されていることを示します。データベースは一事業者が所有しているため、プレイヤーは自分のアカウントや物を実際に所有していません。さらに、集中管理型サーバーには、次のような欠点があります。アカウントの不当な禁止や、開発者や管理者によるゲーム経済におけるごまかしなどです。
ブロックチェーンを利用したシステムは、分散型データベースとして機能するため、ゲーム内の履歴、デジタルオブジェクト、トークン化された資産など、様々な種類のデジタルデータの認証と保護に利用できます。それぞれのアセットは、独自の代替不可能なトークン(NFT)で表されます。アセットには、キャラクター、ゲーム内カード、スキン、装備品等が含まれます。しかし、アセットの種類にかかわらず、それらはすべて分散型ネットワークによって管理されるブロックチェーントークンにリンクされることができます。このように、各プレイヤーは自分のアカウントとデジタルアセットを完全に管理することができ、これらのアセットを常に自由に取引することができます。
2.3. ヘルスケアにおけるブロックチェーン開発
ブロックチェーンは、ヘルスケア産業において様々な形で応用され使用されています。分散型台帳技術は、患者の医療記録の安全な転送を促進し、病院、医師、薬剤師、その他治療に関わる誰もが効率的に参照できます、患者データの単一のエコシステムを構築します。このように、ブロックチェーンは、より正確な診断や個人に合わせたケアプランの作成につながる可能性があります。
3. ブロックチェーンはどのように動作するのか?
ブロックチェーンは多段階のプロセスで動作しますが、その概要は以下の通りです。
How changes get made on blockchain | ブロックチェーン上でどのように変更が行われるのか |
Person A wants to make a change to the blockchain. | Aさんはブロックチェーンに変更を加えたいと考えている。 |
This change will create a new “block”. | この変更により、新しい「ブロック」が作成される。 |
This block is broadcast to every computer on the distributed network. | このブロックは、分散ネットワークのすべてのコンピュータに送信される。 |
The new block is added to the chain. There is a permanent record of the change and it can’t be undone. | 新しいブロックがチェーンに追加されます。変更の永久に残る記録があり、元に戻すことはない。 |
Those computers approve of the change. | それらのコンピュータは、この変更を承認する。 |
出展: Insider
- 承認された参加者は、ブロックチェーン技術によって認証される必要がある取引を行う
- その行為は、その特定の取引やデータを表すブロックを作成する
- ブロックはネットワーク内のすべてのコンピュータ・ノードに送信される
- 認証されたノードは取引を検証し、そのブロックを既存のブロックチェーンに追加する
- ネットワーク全体に更新が配信されると、取引は完了する
4. ブロックチェーンネットワークの4つのタイプ
4.1. パブリックブロックチェーンネットワーク
ビットコインで使用されているようなパブリックブロックチェーンは、誰でも参加できるものです。潜在的な欠点としては、多くの計算能力が必要であること、取引のプライバシーが確保できないこと、セキュリティが弱いことなどが挙げられます。
4.2. プライベートブロックチェーンネットワーク
プライベートブロックチェーンネットワークは、パブリックブロックチェーンネットワークに類似しており、分散型ピアツーピアネットワークです。ただし、1つの組織がネットワークを制御し、誰が参加し、コンセンサスプロトコルを実行し、共有台帳を管理することが許可されるかを決定します。ユースケースによっては、参加者間の信頼と信用を大幅に向上させることができます。プライベートブロックチェーンは、会社のファイアウォールの内側で実行でき、構内でホストすることも可能です。
4.3. 許可制ブロックチェーンネットワーク(ハイブリッドブロックチェーンネットワーク)
このネットワークは、誰がネットワークに参加し、どのような取引に参加することができるかについて制限を設けています。参加するためには、参加者は招待や承認を得る必要があります。
4.4. コンソーシアムブロックチェーン
複数の組織がブロックチェーンを維持する責任を分担することができます。これらの事前選択された組織は、誰が取引を提出したりデータにアクセスしたりできるかを決定します。コンソーシアムブロックチェーンは、すべての参加者が許可を受け、ブロックチェーンに対する責任を共有する必要があるビジネスに理想的です。
ブロックチェーン技術の主な4つのタイプ | ||||
パブリック(許可不要) | プライベート(許可制) | ハイブリッド | コンソーシアム | |
メリット | ・独立性 ・公開性 ・信頼性 | ・アクセス制御 ・パフォーマンス | ・アクセス制御 ・パフォーマンス ・拡張性 | ・アクセス制御 ・拡張性 ・セキュリティ |
デメリット | ・パフォーマンス ・拡張性 ・セキュリティ | ・信頼性 ・監査可能性 | ・公開性 ・アップグレード | ・公開性 |
ユースケース | ・暗号通貨 ・ドキュメント検証 | ・サプライチェーン ・資産所有 | ・医療記録 ・不動産 | ・バンキング ・リサーチ ・サプライチェーン |
5. ブロックチェーン利用のメリットと課題
5.1. ブロックチェーンのメリット
- 非中央集権的
ブロックチェーンは、押し付けがましい仲介者に依存しません。つまり、政府認定の通貨もなく、また検証のための第三者もいません。 さらに、アクセスできるのは自分のブロックチェーンネットワークのみですが、トランザクションは何千、あるいは何百万ものコンピュータに広がっています。この非中央集権のおかげで、データが失われることはないのです。
- 不変性
ブロックチェーンのデータ構造は、アペンド・オンリー(append-only)形式を採用しています。悪意のある第三者が、すでに記録されたデータを変更したり削除したりすることはできません。当然、セキュリティも強化されます。
- セキュリティ
クリプトグラフィーは、ギリシャ由来で、「隠された」「秘密」という意味です。現代の意味でも、安全な通信手段を意味します。ブロックチェーンは、ブロックに格納されたデータを暗号化することで、安全性を高めています。
ブロックは、台帳参加者間のコンセンサスを必要とする検証プロセスを経た後にのみ、チェーンに添付することができます。
- 公開性
ブロックチェーンは分散型台帳であるため、ネットワーク上の誰もが同じドキュメントにアクセスすることができます。これらのデジタルコピーはすべて同じデジタル情報にルートバックされるので、機密情報のコピーを何十枚も個別に持つ必要はありません。
- 効率的
コスト効率は、ブロックチェーン技術の基本的な考え方です。しかし、ブロックチェーンが効率的なのはこの1つのみではありません。従来のようにペンと紙を使って取引すると、ビジネスオペレーションが遅くなります。
デジタル取引ははるかに速く、したがって効率的です。同時に、デジタル情報によって、重要なビジネス資産の保管や記録が非常に容易になり、トレーサビリティが確保されます。
5.2. ブロックチェーンの課題
拡張性:ブロックチェーンが大規模な取引を処理できないことから、拡張性はブロックチェーン開発の最大のデメリットと言えるでしょう。ブロックチェーン技術では、すべての取引が承認されブロックの一部となり、多数のノードによって検証される必要があるため、1秒間に処理できる取引の数は少なくなります。その結果、ネットワークの混雑や高い取引コストといった問題が発生します。
コスト:ブロックチェーン技術は、取引の検証に用いるProof-of-Workなどのコンセンサスプロトコルがエネルギー集約型であるため、多くのエネルギーを消費します。採掘者は、報酬を得るために困難な数学的問題を解かなければならないため、大量の電力を使用する強力な装置が必要です。しかし、Proof-of-stakeやProof-of-Authorityなど、より効率的なコンセンサスプロトコルがこの問題の解決に役立っています。
スピード:中央集権型のデータベースとは対照的に、ブロックチェーンには採掘者が必要です。彼らは専用のソフトウェアを使い、新しい暗号トークンと引き換えに計算パズルを解きます。ブロックチェーンの取引は、従来の支払方法よりも完了までに時間がかかります。
6. 開発者向けブロックチェーン開発ガイド
Step1:ブロックチェーンアプリ開発プロジェクトの目的を明確にする
ブロックチェーン導入の主旨は、従来の手法では取り組めない問題を解決できることです。さまざまな業界にポジティブな変化をもたらすことができる、画期的な技術です。しかし、高価で時間がかかるのも事実です。だからこそ、ブロックチェーンは特定の問題に対する究極の解決策である場合にのみ開発すべきなのです。
その結果、最初のステップは、解決しようとしている問題が何かを決定することです。
ステップ2:コンセンサスメカニズムの選択
ブロックチェーン開発の次のステップは、適切なコンセンサスメカニズム、すなわち分散型台帳の運用を決定する一連のプロトコルを選択することです。主に2つのタイプがあります。Proof of Work (PoW_プルーフ・オブ・ワークシステム) と Proof of Stake (PoS_プルーフ・オブ・ステーク)です。
- PoW
PoWは、ブロックチェーン上で行われるあらゆるアクションを検証するために膨大な計算能力を必要とするコンセンサスメカニズムです。複雑な数学的パズルを解く採掘者を利用し、取引を検証して不正行為を回避します。
- PoS
一方、PoSは採掘者の代わりにバリデーターに依存するコンセンサスメカニズムであり、結果として必要なコンピューティングパワーが少なくなります。PoSブロックチェーンでは、トークンや暗号通貨の所有者が自ら取引を検証します。
Proof of StakeはProof of Workほどコストがかからないため、コンセンサスメカニズムとして好まれています。
ステップ3:適切なプラットフォームを選択する:Ethereum(イーサリアム) と Solana(ソラナ) と Polygon(ポリゴン )
コンセンサスを決定したら、ブロックチェーン開発プロジェクトのためのプラットフォームも選択する必要があります。多くのプラットフォームが利用可能であり、最終的な決定は主にプロジェクトの特殊性によって決まります。検討すべき主なネットワークは3つあります。Ethereum、Solana、そしてPolygonです。
Ethereum、Solana、Polygonの違いについて |
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基準 | Ethereum | Solana | Polygon |
ネイティブトークン | ETH | SQL | MATIC |
設立年 | 2013 | 2017 | 2017 |
プログラミング言語 | Solidity | Rust C C++ | Golang Solidity Vyper |
トランザクションスピード | 13~15/ 秒 | 50,000~65,000/ 秒 | ほぼ65,000/ 秒 |
コンセンサスメカニズム | Proof of Work (プルーフ・オブ・ワークシステム) | Proof of Stake (プルーフ・オブ・ステーク) と Proof of history (プルーフ・オブ・ヒストリー) | Proof of Stake (プルーフ・オブ・ステーク) Plasma- based sidechain (プラズマベースサイドチェーン) |
アーキテクチャ | ステートフルアーキテクチャ | ステートレスアーキテクチャ | マルチチェーンアーキテクチャ |
拡張性 | 拡張性に制限あり | 拡張性を考慮する高性能なプロトコル | マルチチェーンソリューションは拡張性に優れている |
- Ethereum
- Solana
- Polygon
ステップ4:アーキテクチャの設計を開始する
この段階では、ブロックチェーンのアーキテクチャを決定し、その設計を開始する必要があります。ここでの選択は、許可不要ブロックチェーンと許可制ブロックチェーンに分類されます。前者は、参入のための認証を必要としないブロックチェーンネットワークで、誰の承認も受けずに自由に取引を行うことができます。後者は、どのグループがエコシステムに入り、管理に参加し、基本的な機能にアクセスできるかを決める「セキュリティガード」が存在します。
また、パブリック(誰でもアクセス可能)なブロックチェーンとプライベート(許可が必要)なブロックチェーンを選択することができます。パブリックブロックチェーンは通常、暗号通貨のような大規模プロジェクトに活用され、プライベートブロックチェーンは企業や分散型自律組織(DAOs)に適しています。
ステップ5:アプリケーションの設定を慎重に行う
これからアプリケーションの設定作業を開始します。ここでは、ブロック署名、パーミッション、アドレスフォーマットの実装を開始します。この情報はブロックチェーンに到達すると変更できないため、すべてがあるべき姿であることを確認する必要があります。
時間をかけて、これまでのステップをもう一度見直し、各ステージを正確に選択したことをご確認ください。社内/アウトソーシングの開発チームに相談したり、コンサルティング・サービスを利用したりするのも良いです。
ステップ6:新しいアプリケーションプログラミングインターフェース(APIs)を構築するか、既存のものを利用する
基本的にAPIsは、2つの異なるアプリケーションの間で仲介役として機能します。この場合、APIsはアプリケーションがブロックチェーンネットワーク上で正しく機能することを保証します。データを取得したり、キーペアを作ったり、監査機能を実行したりするために必要です。
APIsはゼロから作成することも、既存のものを使用することもできます。プロジェクトのタイムラインがタイトな場合は、既存のAPIを使用することが望ましいです。プロジェクトで必要とされ、そのための時間とリソースがある場合は、ゼロから構築することも可能です。
どのようなブロックチェーンプロジェクトでも、次のAPIsを提供する必要があります:スマートコントラクト管理、鍵管理、アドレスと鍵の生成、スマート資産のライフサイクルの管理。
ステップ7:インターフェイスを設計する
当然ながら、インターフェイスがなければブロックチェーンアプリケーションを動かすことはできません。この段階では、ユーザーインターフェースと管理者インターフェースの設計を開始する必要があります。また、ブロックチェーン開発言語も、プロジェクトの特殊性と開発チームの能力に応じて選択する必要があります。
ステップ8:MVP(Minimum Viable Product)を作成し、プロジェクトをテストする
MVPの作成は、ブロックチェーン開発プロジェクトのライフサイクルにおける最後のマイルストーンです。これはブロックチェーンアプリケーションやシステムの最も基本的なバージョンで、開発者やクリエイターがプロジェクトが実行可能かどうかを確認することを可能にします。主に、既存の問題を特定し、機能性をテストするために使用されます。MVPが検証され承認された後、より高度な機能の組み込みを開始することが可能です。
まとめ
CMC Japanは、この記事があなたがブロックチェーン開発への自信と意欲を高める一助となれば幸いです。ブロックチェーン開発は難しいものですが、段階的なブロックチェーン実装戦略を理解し、採用することで、そのプロセスを容易にすることができます。
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