日本企業の課題から学ぶ、 スマートなDevOps導入戦略

日本企業の課題から学ぶ、 スマートなDevOps導入戦略

本ブログでは、日本企業がよりスマートで保守性の高いDevOpsパイプラインをどのように設計していけるのかを、ステップバイステップで解説します。アセスメントから自動化、Infrastructure as Code(IaC)からCI/CDに至るまで、すべての要素は「スピードを高めながら統制を維持する」という1つの目的に基づいて設計されるべきです。

Table of Contents

なぜ今、DevOpsなのか?

日本のIT環境は大きな転換期を迎えています。高速なリリースの要求、AIワークフローとの連携、インフラの複雑化といった背景により、従来の開発体制では対応が困難になりつつあります。 

このような状況で注目されるのがDevOpsです。単なるツール群ではなく、開発と運用の分断を解消し、コラボレーションを促進し、安定したデリバリープロセスを実現するための実践的なフレームワークです。 

日本企業の多くは、レガシーシステムのモダナイゼーション、ハイブリッド/マルチクラウドへの移行、アジャイルの導入といったDXの取り組みを進めていますが、依然として手作業によるデプロイ、分断されたツールチェーン、サイロ化した組織が、開発と運用の大きなボトルネックとなっています。 

ここでDevOpsの真価が発揮されます。DevOpsは、以下を可能にするための鍵です: 

  • 高速かつ予測可能なリリースサイクル 
  • 部門を超えた連携と可視化 
  • 自動化による環境の一貫性確保 
  • 回復力とロールバック体制の強化 

2025年現在、システムの複雑性とリリース頻度が増す中で、DevOpsは組織横断でスケーラブルなソフトウェア開発を支える不可欠な土台となっています。 

まず現状を見極める ― 導入はその後に

多くの日本企業では、DevOps導入の第一歩としてCIサーバーやIaCツール、コンテナ基盤といった「ツールの選定」から始めてしまう傾向があります。しかし、その前に現在のワークフロー、インフラの現実、社内のサイロ構造を十分に把握していないケースが少なくありません。 

その結果、レガシーシステムの存在、ウォーターフォール型の開発体制、厳格なガバナンスが残る複雑な環境では、導入初期で取り組みが停滞することも多く見られます。 

だからこそ、最初のステップとして構造化されたDevOpsアセスメントが不可欠です。人・プロセス・プラットフォームという3つの観点で現状を正しく把握し、自社に合った導入計画を設計することが重要です。DevOpsの「理想像」ではなく、「実際の組織構造」に即した設計が成功の鍵となります。 

アセスメントで確認すべき観点 

DevOpsアセスメントでは、技術的な側面と運用的な側面の両方を可視化します。主な観点は以下の通りです: 

  • ツールチェーンの利用状況 
     Jenkins、CircleCI、GitHub ActionsなどのCI/CDツールは使われていますか?それらは開発チーム全体に統合されているか、それとも一部の熟練エンジニアに限定されていますか? 
  • ワークフローの可視化 
     コードの変更は、開発・テスト・ステージング・本番環境へどのように進んでいますか?その中で手作業による引き継ぎや承認、遅延はどこにありますか? 
  • 環境のプロビジョニング 
     オンプレミスやハイブリッド構成において、インフラは依然として手動で構築されていますか?Infrastructure as Code(IaC)の基盤は整備されていますか? 
  • チーム間の連携 
     開発チームとインフラチームは同じ目標に向かって連携していますか?それとも問題が起きたときに責任が分断されてしまいますか? 
  • ガバナンスとコンプライアンス 
     シークレット情報は安全に管理されていますか?変更承認の記録と追跡は適切に行われていますか? 

このようなアセスメントにより、自社のDevOps成熟度を客観的に捉えることができ、ツール導入やプロセス改善の方向性もより明確になります。 

事例:日本の製造業企業におけるアセスメント 

ある日本の中堅製造業クライアントに対して実施したDevOpsアセスメントでは、以下のような実態が明らかになりました: 

  • 開発者はGitHubを使用し、ローカルでユニットテストを実行していたが、ステージング環境へのデプロイはZIPファイルを作成し、それをインフラチームにメール送信するという手作業に頼っていた。 
  • Jenkinsは導入されていたが、実際に使用しているのは一部のパワーユーザー1名のみだった。 
  • サーバーはAWS上に構築されていたが、Infrastructure as Code(IaC)は未導入で、ロールバック手順も文書化されていなかった。 
  • デプロイごとに部門長による手動承認が必要で、その承認はメールと添付されたExcelファイルで管理されていた。 

アセスメントの結果を踏まえ、当社はクライアントとともに、実行可能なロードマップを構築しました。 

その中で取り組んだ主な内容は以下の通りです: 

  • GitHub ActionsとTerraformを活用し、まずは社内ツールのデプロイから自動化を開始。 
  • デプロイ状況を可視化する共通ダッシュボードを導入。 
  • メールによる承認に依存せず、ポリシーをコード化した承認ゲートを整備(Policy as Code)。 
  • 将来的に工場系システムへの展開を見据えた、社内DevOps支援グループを設立。 

アセスメントからロードマップへ 

DevOpsアセスメントは単なるレポートではありません。それは、実行可能なロードマップを構築するための土台です。特に日本の企業においては、リスク許容度が低く、安定性が重視される傾向にあるため、「一斉導入」よりも段階的な導入のほうが、現実的かつ持続可能です。 

一般的なDevOps導入ロードマップの例: 

  1. パイロット導入(自動化) 
     まずは業務への影響が少ない非クリティカルなシステムを対象に、自動化の第一歩を踏み出します。 
  1. リファレンスパイプラインの構築 
     コードチェック、テスト、ステージング環境へのデプロイを含む「モデルパイプライン」を1つ確立します。 
  1. IaCの導入展開 
     TerraformやAnsibleなどのバージョン管理されたコードにより、手動によるインフラ構築を置き換えます。 
  1. モニタリングとフィードバックループ 
     デプロイ頻度、エラー率、ロールバック信頼度といった指標を追跡する仕組みを導入し、改善につなげます。 
  1. 段階的な拡張 
     組織の準備状況に応じて、DevOpsの取り組みを他のチームやシステムへ徐々に拡大します。 

このような段階的・構造的なアプローチにより、DevOpsは「押しつけ」ではなく「目的を持った導入」として受け入れられ、エンジニアリング部門とビジネス部門の両方が、一歩一歩自信を深めながら進めることが可能になります。 

Infrastructure as Code(IaC)によるインフラ自動化

多くの企業では、インフラのプロビジョニング作業が依然として手作業で行われており、時間と労力を要しています。クラウドネイティブな環境であっても、チケットベースの運用、共有スプレッドシート、手書きのスクリプトに頼るケースがいまだに見られます。 

これらのワークフローは、開発スピードを低下させ、人的ミスのリスクを高め、特に部署をまたいだインフラ変更の追跡を困難にします。 

このような課題に対応するため、現代的なDevOpsの基盤としてInfrastructure as Code(IaC)を導入する企業が増えています。 

IaCは、アプリケーションコードと同様に、バージョン管理が可能で、レビューやテストも行えるコードを用いてインフラを管理・プロビジョニングする手法です。エンジニアは、サーバーやクラウドサービスを手動で構成する代わりに、宣言的な設定ファイルによりインフラを定義し、自動化されたパイプラインを通じてデプロイします。 

CMC Japanでは、以下のようなツールを主に活用しています: 

  • Terraform:AWS、Azure、GCPなどのクラウドインフラ管理に使用 
  • Ansible:OSレベルの構成、アプリケーションのセットアップ、マルチノードのオーケストレーションに活用 
  • CloudFormation:AWS専用テンプレートが求められる場面で採用 

これらのツールを活用することで、以下のような効果が期待できます: 

  • 開発・ステージング・本番環境間での一貫性の確保 
  • プロビジョニング作業の所要時間を数日から数分に短縮 
  • Gitによる変更履歴の追跡で、監査やロールバックが容易に 
  • 部署やプロジェクトを問わず、標準化された環境の整備 

スピードだけではない:ガバナンスとスケーラビリティ 

特に日本企業にとって、Infrastructure as Code(IaC)の価値は自動化だけにとどまりません。IaCは、ガバナンス、セキュリティ、災害復旧体制の強化にもつながります。 

たとえば: 

  • 変更管理:すべてのインフラ変更がGitに記録されるため、監査や社内レビューにおける追跡性が大幅に向上します。 
  • アクセス管理:重要な操作をコードレビュー担当者のみに制限できるため、クラウドコンソール上での誤操作やリスクを抑えられます。 
  • 災害復旧:IaCを活用すれば、コード定義に基づいて環境全体を数分で再構築可能になり、事業継続において重要な備えとなります。 

Infrastructure as Code は、単なる技術的なアップグレードではありません。迅速なデリバリー、強固な統制、そして持続可能な成長を可能にする運用戦略です。特に、マルチクラウド、コンテナ、AI統合といった技術活用を拡大する企業にとって、その意義はますます大きくなっています。 

より優れたCI/CDパイプラインを構築する

レガシーシステムを維持するためのコストは?

多くの企業では、DevOpsの取り組みが進んでいる一方で、CI/CDについては断片的または十分に活用されていないケースが少なくありません。バージョン管理や基本的な自動化こそ導入されているものの、リリースプロセスはチームごとにばらつきがあり、手動のステップが深く組み込まれているのが現状です。 

こうした標準化の欠如は、リリースの遅延やリスク、部署をまたぐスケーラビリティの阻害といった課題を引き起こします。特に、クラウド・オンプレミス・コンテナ環境が混在する現在のシステム構成においては、スピードだけでなく、制御性・トレーサビリティ・長期的な運用性の観点からも、しっかりと設計されたCI/CDパイプラインが不可欠です。 

日本企業におけるCI/CDの一般的な課題 

CMC Japanが日本企業とのプロジェクトを通じてよく目にする、CI/CDの成熟を妨げる3つの代表的な要因は以下のとおりです: 

  • パイプラインの断片化 
    ツールや運用がチームごとにバラバラで、標準化されておらず、スケールや引き継ぎが困難。 
  • 手動承認と隠れた依存関係 
    リリースプロセスが人手による判断やメールのやり取り、Git管理外の操作に依存している。 
  • フィードバックと可視性の欠如 
    問題が発生しても、迅速な対応や失敗からの学習につながる「観測性」が不足している。 

これらの課題は、必ずしも技術的な問題とは限らず、組織文化やリスク回避的な慣習が手動操作を好む傾向にあることも要因のひとつです。 

成熟したCI/CDパイプラインに求められること 

効果的なCI/CDパイプラインは、単にコードを自動でプッシュする仕組みではありません。品質・ガバナンス・トレーサビリティをすべてのリリースに組み込むための、組織的な仕組みであるべきです。 

最低限、設計の整ったパイプラインは以下を実現する必要があります: 

  • ユニットテスト、統合テスト、セキュリティチェックなどの複数ステージのテストをサポート 
  • 社内統制に準拠したルールベースの承認フローを組み込む 
  • ブルーグリーンデプロイやカナリアリリースによるロールバック対応が可能 
  • 監査に対応したログ記録と、リアルタイムのリリース状況の可視化 

これらの要素を組み合わせることで、リリース管理の迅速化と透明性が実現し、特に金融、物流、行政といった規制業界では大きな価値をもたらします。 

事例:手動から「信頼できるデリバリー」へ 

ある大手物流企業では、CI/CDツールは導入済みでしたが、構造が整っていませんでした。各リリースは、インフラチームへの承認メールに依存しており、インシデント発生時も全体のトレーサビリティがなく、対応に時間がかかっていました。 

CMC Japanは、インフラチームやコンプライアンス部門と連携し、以下を実現しました: 

  • GitLab CI による自動テストとプレプロダクション環境へのデプロイの導入 
  • Gitベースの権限管理による自動承認フローの構築 
  • テストレポート、ログ、Slack通知による観測性の強化 
  • ロールバック手順と発動条件の文書化 

この導入により、開発チームは週に複数回のデプロイが可能となり、インフラ部門はすべての変更を手動で検証する必要がなくなりました。コンプライアンス部門も「いつ・誰が・何をリリースしたか」を完全に把握できるようになりました。 

CI/CDは継続的な業務システムである 

CI/CDは一度きりの自動化プロジェクトではありません。ビジネス成果とテクノロジーをつなぐ、基幹的な業務システムです。 

安定性と責任ある運用が重視される日本の伝統的な企業において、ガバナンスの効いたCI/CDパイプラインは、次のような役割を果たします: 

  • プロセスの厳格さを保ちながら、迅速な開発を実現 
  • 監査対応、文書化、法令遵守を支援 
  • 他部門への展開も容易で、重複や再教育の負担が少ない 
  • デプロイ時のトラブル減少と、リリース後の復旧時間短縮 

CI/CDを単なるツールではなく、生きた仕組みとして運用することで、アジリティとエンタープライズ信頼性の両立が可能になります。 

CMC Japan が選ばれる理由

DevOpsの導入は、単に最新のツールを取り入れることではありません。既存システムの構造、組織内のプロセス、運用上のリスクを深く理解したうえで進める必要があります。特に日本企業においては、長年使用されているインフラや厳格なガバナンス体制が根付いているため、DevOpsの導入には慎重かつ協調的なアプローチが求められます。 

CMC Japan は、日本企業の現実を尊重しつつ、将来的なスケーラビリティにも備えたDevOps体制の構築をご支援しています。 

私たちは、金融・物流・製造・公共といった多様な業界で、お客様それぞれのフェーズや内部体制に合わせたDevOpsロードマップを策定・提供しています。オンプレミス環境中心の企業から、マルチクラウドに積極的に移行している企業まで、幅広く対応可能です。 

CMC Japanの強み: 

  • DevOpsアセスメント、IaC(Terraform・Ansible)、CI/CDパイプライン設計、セキュアな導入支援まで一貫した実践的なノウハウ 
  • 日本市場特有の業務プロセス・コンプライアンス要件・企業文化に精通したエンジニアによるローカル対応 
  • パイロット導入から段階的に展開するステップ型アプローチにより、現場の負担やリスクを最小化 

DevOpsの導入を検討し始めた企業様から、既存の取り組みをより効果的にスケールさせたい企業様まで、CMC Japanはあらゆるフェーズを現実的かつ継続的にご支援いたします。 

当社が提供するテンプレートやフレームワークは、すでに日本の金融・物流・製造業界で実績があり、日本語での対応はもちろん、国内企業文化・内部統制・リスク感度を十分に理解した体制でご提供しています。 

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