ゼロエミッション社会への一歩:日本と世界のEV取り組み

日本と世界のEV取り組み

EVの普及を促進するためには、国の政策や方針が非常に重要な役割を果たします。世界各国では、以下のような車両の電動化に関する目標を設定し、その実現に向けた取り組みを行っています。 

目次

〈表〉各国の電動化目標について

出典:  evdays.tepco.co.jp

それでは、世界各国の政策や方針を個別に見ていくことにしましょう。 

日本の取り組み

日本では「2035年までに乗用車の新車販売において電動車を100%にする」という政策が打ち出されています。ここでいう「電動車」には、EVやPHEVのみならず、HEVやFCVも含まれています。 

この方針は、経済産業省が2020年12月に関連省庁と連携して策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に基づいており、2021年6月にはその改訂版が公表されました。 

グリーン成長戦略の中では、「2030年までに現在の4倍、つまり3万基の急速充電器を設置する」といったインフラ整備に始まり、税制優遇措置、研究分野への支援、国際連携など、より具体的な戦略が盛り込まれています。 

このグリーン成長戦略は、自動車業界に限らず、エネルギー関連産業や半導体・情報通信産業など幅広い分野に影響を及ぼしています。この戦略では、成長が見込まれると同時に温室効果ガスの削減に寄与する14の重要産業分野が特定され、経済成長と環境適合を総合的に進めることが目指されています。 

また、グリーン成長戦略の改訂版が発表された翌年の2022年6月には、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」においてグリーントランスフォーメーション(GX)が重点投資分野の一つとして位置付けられました。2023年6月には、脱炭素社会の実現を目指すGX推進法が国会で成立し、今後10年間で150兆円規模の投資が計画されており、再生可能エネルギーやEVの普及が更に促進される見込みです。 

さらに、日本の各都道府県や自治体もEV普及のための取り組みを進めています。例えば、東京都は「ZEV普及プログラム」を掲げ、2050年の脱炭素社会実現に向けて、自動車からのCO2排出実質ゼロを目指しています。充電インフラの支援やEV購入に対する補助金の提供など、具体的な施策を通じてEVの普及を推進しています。 

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世界の取り組み

①アメリカの政策・方針

アメリカでは、2021年8月5日にバイデン大統領が「2030年までにアメリカ国内で販売される新車の50%以上を電動化する」という目標を掲げる大統領令に署名しました。この政策は、国内の自動車市場における電動化の推進を目指しています。 

この大統領令に伴い、ゼネラルモーターズ(GM)、フォードなどの主要自動車メーカーも電動化の推進を加速させるという声明を発表しました。これにより、アメリカの自動車業界は本格的な電動化への転換を図っています。この文脈での「電動化車両」にはEVやPHEV、FCVが含まれますが、ハイブリッド車(HEV)は含まれていないとされています。 

2022年8月に成立したアメリカの「インフレ抑制法(IRA)」には、EVおよびPHEVに対する最大7500ドルの税額控除優遇策が含まれていますが、これに関する厳格な条件が大きな混乱を招いています。 

2023年3月末、アメリカの財務省と内国歳入庁による発表によれば、税額控除の対象となるためには、車両の最終組立を北米で行うことが必須条件とされています。さらに、バッテリーの材料や部品の調達および製造は北米またはアメリカが自由貿易協定(FTA)を結んでいる国で行う必要があります。IRAの初期発表時よりは条件が緩和されましたが、今後の動向には依然として注目が集まっています。 

②ヨーロッパの政策・方針 

ヨーロッパでは、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が「欧州グリーンディール」に関する法案を発表しました。 

この法案の中で自動車分野に設定された目標は、非常に厳しいものです。具体的には、CO2排出量を「2030年までに2021年比で55%削減」「2035年までに2021年比で100%削減」することが目標とされています。これは、2035年までにはPHEVやHEVを含め、すべてのガソリン車やディーゼル車の販売が禁止されることを意味しています。ただし、ドイツからは2035年以降も合成燃料(e-fuel)を使用する内燃機関の利用を例外とする提案が出され、EU理事会の支持を得ています。この新しいCO2排出基準は、今後の自動車産業に大きな影響を与えるものとなるでしょう。 

③中国の政策・方針

中国では、既存の新エネルギー車(NEV)政策を加速する方針を打ち出しています。具体的には、2035年までに「NEVの割合を全体の50%以上にする」という目標を掲げており、そのうち「EVを全NEVの95%以上にする」としています。また、NEV以外の残り50%については、すべてハイブリッド車(HEV)にする計画です。 

さらに、2023年末で終了予定だったNEVの取得税減免政策を2027年末まで延長することが決定しました。このような購入時の優遇策を通じて、今後もNEVの普及を促進していく見込みです。 

④その他の国の政策・方針 

イギリスでは、2020年11月に「グリーン産業革命」が発表され、「2050年までに温暖化ガス排出ゼロ」を目指すという目標が設定されました。この一環として、純ガソリン車・純ディーゼル車の新車販売禁止の時期が、以前に定められていた2035年から2030年へと前倒しされました。 

また、インドも「ガソリン車・ディーゼル車禁止」を早期に提唱した国の一つです。2017年時点でインド政府は「2030年までに完全EV化」という方針を打ち出していましたが、政策の進行が順調でなかったため、この方針は後に撤回され、現在では2030年までに新車販売の3割をEVとする新たな目標が設定されています。 

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電気自動車普及へのカギ:社会の理解と変化が重要 

現在、日本ではEVが本格的に普及し始めるスタートラインに立っています。 

EVは、ユーザーにとっても、自動車メーカーにとっても、そして日本政府にとっても新たな挑戦であることは間違いありません。自動車の歴史を振り返っても、環境保護のために車の構造を変えなければならないという状況はこれまでにないものです。そのため、ユーザーの意識変化はもちろん、技術の革新、インフラ整備、政策立案など、まだ進化し続ける段階にあります。 

「ガソリン車からEVへ」という単純な車種の変更だけでなく、EVの普及にはさらに複雑な課題が伴います。例えば、スマートフォンやインターネットのような他の技術革新が自然に普及したのとは異なり、EVの普及には車自体の技術向上に加え、付随するインフラ整備も必要です。 

日本政府は既にEV普及に向けた戦略を打ち出していますが、社会全体がEVを受け入れ、それに適応していくことが重要です。最近では、カーシェアリングサービスを通じてEVを身近に感じる機会も増えています。多様な進歩と共に、私たちも徐々にEVのある生活に慣れていけば、自然とEVの普及率は高まるでしょう。