電気自動車が日本で広がらない本当の理由と製造の未来
環境への意識が高まる中で電気自動車は注目されていますが、日本国内での普及が進まない要因について、具体的な視点から解説を行います。
このブログを通じて、電気自動車の普及に関わる多面的な課題を深く理解していただければ幸いです。
目次
①「電気自動車=環境に優しい」は真実か?
電気自動車(EV)は、走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、環境にやさしいとされていますが、その真実はどうなのでしょうか。
電気自動車は、走行時にCO2を排出しないため、「ゼロ・エミッション車」として知られています。しかし、電気自動車が動力として使用する電気は、日本国内では主に火力発電所によって生産されており、これらの発電所からはCO2が排出されています。太陽光や風力など、再生可能エネルギーによる発電を除けば、電気自動車が完全なゼロ・エミッションとは言えないのです。
実際に、電気自動車とハイブリッド車が走行する際のCO2排出量を比較した広島市のレポートが公表されています。
電気自動車の走行距離ごとのCO2排出量を、バッテリー充電時の電力消費やバッテリー容量と走行距離に基づいて計算すると、ハイブリッド車(HV)のCO2排出量を超えることが分かります。さらに、プラグインハイブリッド車(PHV)や燃料電池車(FCV)も含めた場合、最もCO2排出量が少ないのはハイブリッド車だと結論付けられています。
さらに、製品が生産から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクルアセスメントを考慮すると、電気自動車は生産段階でのCO2排出量が多いため、本当に環境に優しいのかという疑問が生じます。
結局のところ、電気自動車の普及を推進するだけでは不十分で、再生可能エネルギーへの転換も同時に進める必要があると言えます。これらの取り組みがなければ、脱炭素社会への大きな一歩とはなり得ないでしょう。
② 電気自動車普及のカギを握る「充電インフラ」
電気自動車(EV)の普及において最も重要な要素の一つは、充電インフラの整備です。2017年、経済産業省がまとめた資料によれば、新築戸建て住宅の60%と新築マンションの99%が充電設備を設置していないというのが現状です。
電気自動車の購入者の多くは戸建てに住んでいますが、都市部のマンションにおける充電設備の設置が進まなければ、普及は難しいとされています。
この問題に対処するため、経済産業省は「令和2年度電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の充電インフラ整備事業費補助金」を設置しました。この補助金は、マンションだけでなく、事務所、工場、商業施設、宿泊施設、高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、道の駅などに充電設備を設置することを目的としています。
③電気自動車とガソリン車、どちらがお得か?
電気自動車(EV)の普及における大きな障害の一つとして、高価が挙げられます。
例えば、日産リーフはCセグメントのやや大きめのコンパクトカーで、40kWhバッテリー搭載モデルが300万円台、62kWhバッテリー搭載モデルが400万円台となっています。同じ価格帯でメルセデス・ベンツAクラスが購入可能なことを考えると、電気自動車の価格は割高に感じられるかもしれません。
この高価格の主な原因は、電気自動車用バッテリーのコストが高いことにあります。経済産業省が実施している「クリーンエネルギー自動車補助金」もありますが、その最大支援額は42万円であり、ガソリン車との価格差を完全に埋めるには至っていません。
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④航続距離問題は徐々に解決に向かうが、新たな課題も
電気自動車(EV)の普及を妨げる要因の一つとして「航続距離」の短さがありましたが、バッテリーの容量拡大により、この問題は徐々に解消されつつあります。
しかし、バッテリーの充電にかかる時間の長さという課題はまだ解決されていません。たとえば、日産リーフの62KWhバッテリーを搭載したモデルは、航続距離が458kmありますが、急速充電器を使用してもフル充電には約60分必要です。長距離走行におけるバッテリー切れのリスクは減少しましたが、電気自動車の普及を推進するためには、もっと迅速に充電できる設備の整備が求められています。
さらに、電気自動車の普及が進むにつれ、特に夏や冬の電力ピーク時に電力供給が不足する可能性も指摘されています。
日本の市場と製造業に与える影響
自動車産業は日本の重要な基幹産業の一つです。しかし、電気自動車(EV)の普及に伴い、その部品構成がガソリン車と大きく異なるため、国内の製造業に大きな影響が及ぶことが懸念されています。さらに、日本がガソリン車からの移行を進める過程で、軽自動車の規格の撤廃が起こりうる可能性もあります。
①電気自動車普及による部品ニーズの変化
電気自動車(EV)などの次世代自動車が普及するにつれて、約3万点にも及ぶガソリン車用の部品の中で、約4割が不要になると予想されています。
この変化は、特にエンジン部品の製造業者に大きな影響を与えるでしょう。電気自動車ではエンジン関連の駆動・伝達部品や電装品、電子部品などが必要なくなります。そのため、トランスミッションやエンジン制御装置、スパークプラグなどの製造は影響を受けます。
一方で、既存のガソリン車技術を電気自動車に応用できる部品製造に取り組む業者も存在しますが、全体としては自動車産業に大きな変革がもたらされることが予想されます。
②軽自動車規格の未来
2020年11月、日本政府が2030年代半ば以降の純ガソリン車の新車販売廃止を検討していることが報じられ、これには軽自動車も含まれることが12月に明らかにされました。現在、日本の新車市場で約4割のシェアを占めるガソリン車が主流であり、この動きは大きな影響を与えると予想されます。
電動化に伴い、軽自動車の価格上昇が予想されています。かつては100万円以下で購入可能だった軽自動車ですが、最近では性能向上により150万円から200万円のモデルが主流になっています。電動化が進むと、これらの軽自動車は200万円程度の低価格帯モデルになる可能性があります。
しかし、現在の軽自動車規格ではバッテリーのスペースを確保すると車内が狭くなるという問題があります。これにより、税制上の優遇を受ける軽自動車の規格自体の見直しや撤廃が検討されているとのことです。
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おわりに
世界的に電気自動車(EV)の普及が進んでいますが、多くは高級車のカテゴリーに属しています。また、日本では現在、電力供給の大部分が火力発電に依存しており、このため発電過程でCO2が排出されています。これが、脱炭素社会への寄与を制限しているのが現状です。
しかしながら、PHEV(プラグインハイブリッド車)やHV(ハイブリッド車)を含む次世代自動車の普及は、今後も引き続き進展していくと考えられます。
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